脂漏性皮膚炎とは
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん、Seborrheic Dermatitis)とは、頭皮・顔・体など皮脂分泌の多い部分(脂漏部位)に、黄色~白色のフケのようなかさつきや赤みが出る皮膚炎です。
特に頭皮、小鼻のまわり、眉毛、耳の後ろに発生しやすく、頭のフケの原因にもなります。大人だけでなく、赤ちゃんにもみられます。
日本では約3〜4%の方が脂漏性皮膚炎を発症すると言われており、非常に一般的な皮膚疾患の一つです。
脂漏性皮膚炎の症状
脂漏性皮膚炎では以下のような症状が現れます。
- 頭皮(特に髪の生えぎわ)や小鼻の横~ほうれい線、眉毛まわり、耳などに出やすい
- 黄色〜白色のフケ様のかさかさ(脂性鱗屑:しようりんせつ)
- 皮膚の赤みやかゆみ
- 症状が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す
脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔のかゆみ・フケ・赤みの原因となることが多く、放置すると悪化することがあります。
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の原因はひとつではありません。主に次のような要因が関係しています(PMID: 23806151)。
- マラセチア菌という常在菌(カビの一種)の増殖
- 皮脂の分泌異常(量や成分のバランスの乱れ)
- ビタミンB群の不足
- 乾燥
- 紫外線
- ストレス、肥満、生活習慣の乱れ
- 遺伝的な要素
これらの要因が重なることで、肌に炎症が起こり、脂漏性皮膚炎が発症・悪化します。
実際に当院でも、冬場やストレスが強い時期に悪化する方を多くみられます。
また近年の研究では、皮膚の免疫不調や皮膚バリア機能低下、皮膚の非飽和脂肪酸の増加が脂漏性皮膚炎の病態に重要であることがわかってきています(PMID: 32125725、PMID: 38472524)。
乳児(赤ちゃん)の脂漏性皮膚炎
乳児では、生後すぐから3ヶ月の間に約70%の赤ちゃんに脂漏性皮膚炎がみられます。
頭皮やおでこ、眉の周りに厚いかさぶたや赤みが出るのが特徴です。
出生直後は母体から受け継いだ男性ホルモンの影響を受け、その後は赤ちゃん自身がホルモンを分泌し始めます。このホルモンバランスの変化によって一時的に皮脂の分泌が活発になり、脂漏性皮膚炎が起こりやすくなります。
多くの場合は1歳頃までに自然と改善しますが、かゆみや湿疹が強い場合はアトピー性皮膚炎との併発もあるため、皮膚科での診察をおすすめします。
脂漏性皮膚炎と似た皮膚症状
脂漏性皮膚炎は以下の皮膚疾患と間違えられることがあります。
-
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎では肌の乾燥が強く、肘や膝の内側に左右対称に湿疹がみられます
-
尋常性乾癬
肘膝の関節部にカサカサした赤い発疹がみられます。頭皮の症状はダーモスコピーにより血管を観察することで見分けることができます(PMID: 21155753)。
-
赤ら顔・酒さ、酒さ様皮膚炎
酒さ・赤ら顔は真皮の炎症が起こるためかさかさしたかさぶたはみられません。また酒さ・赤ら顔ではポツポツ(丘疹)がみられることがあります。
- 接触皮膚炎(かぶれ)
- 口囲皮膚炎
- ニキビダニ症
- 全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎などの膠原病
- たむし(体部白癬)などの真菌感染症
特に赤ら顔や酒さとの鑑別は難しく、脂漏性皮膚炎の治療をすることで酒さ様皮膚炎になることもありますので注意が必要です。
正確な診断のためには、皮膚科専門医の診察が重要です。
治療
脂漏性皮膚炎は皮脂が原因のため根本的に完治させるのが難しい皮膚炎ですが、炎症を抑え、再発を防ぐコントロール治療によって良好な状態を保つことが治療の目標になります。
① 患部の清潔とスキンケア
- 頭皮や顔をやさしく洗浄し清潔に保つことが大切です。
- 市販シャンプーでは、抗真菌成分配合シャンプー(例:コラージュフルフル)を継続使用すると改善しやすくなります。グリチルリチン酸2K配合のシャンプーも抗炎症効果が期待できます。
- 頭皮の保湿も大切で、スプレータイプの保湿剤も多数市販されています。セラミド配合やビーソフテンローションのようなヘパリン類似物質配合の保湿剤をおすすめしています。
- アルコールやタバコも悪化要因となるため、控えることが推奨されます。
市販のフケ用シャンプーは予防や一時的な改善には有効ですが、赤みやフケを改善するためにはステロイド外用薬や抗真菌外用薬の使用が重要です。
② 塗り薬(外用治療)
脂漏性皮膚炎の外用治療は主に以下の2種類です。
ステロイド外用薬
炎症・かゆみを素早く鎮める効果があります。長期的な使用には向いていないため症状悪化時に短期間使用することが理想です。
頭皮の場合はローションタイプを使用します。
(例:アンテベートローション、フルメタローション、リンデロンVローション、リンデロンVGローションなど)。
顔や耳の場合は軟膏やクリームタイプを使用します。
(例:リンデロンV軟膏、リドメックス軟膏、ロコイド軟膏など)
コムクロシャンプーというステロイドを含むシャンプーも処方可能です。短時間だけ皮膚に薬剤を接触させる「ショートコンタクトセラピー」という方法を用いることで、炎症を効果的に抑えながら副作用を最小限に抑えることができます。再発を繰り返す頭皮の脂漏性皮膚炎の方に特に有効です。
抗真菌薬(ケトコナゾールなど)
脂漏性皮膚炎の原因となっているマラセチア菌の増殖を抑え、さらに皮脂を抑える効果、さらに抗炎症効果があり皮膚炎を改善させます。
ゆっくり効果が出ますが、副作用が少なく、長期的な使用にも適しています。
乳児(赤ちゃん)の頭皮にみられるような厚いかさぶたがついている場合は親水クリームやオリーブオイルなどで厚いかさぶたを優しく取っていくこともあります。
他にはビタミンBの飲み薬やかゆみに対して抗ヒスタミン薬の飲み薬、十味敗毒湯などの漢方薬を使用することもあります。
よくある質問
頭のフケが気になります。脂漏性皮膚炎でしょうか?
フケの原因は、ヘアケア製品のかぶれや乾燥など様々なものがあります。ただ脂漏性皮膚炎の方はとても多く、生え際や顔のTゾーン、耳にも同症状がある場合は脂漏性皮膚炎の可能性があります。
赤みは消えますか?
ステロイドやニゾラールなどの塗り薬で赤みやかさかさは減りますが、赤みを消すためにレーザー治療が必要な場合があります。
脂漏性皮膚炎は完治しますか?
脂漏性皮膚炎は、マラセチア菌や皮脂の量・質など様々な原因があります。完治を目指すのではなく、うまくコントロールして日常生活に支障がでないようにすることが治療の目標になります。
日常生活で注意することはありますか?
規則正しい生活、頭皮の保湿、バランスのいい食事、ストレスをためないことが大切です。
まとめ
脂漏性皮膚炎は、頭皮のフケ・赤み・かゆみの原因となる代表的な皮膚炎です。
再発を繰り返すこともありますが、皮膚科での正確な診断と治療の継続でコントロール可能です。
当院では、皮膚科専門医が一人ひとりの症状に合わせた治療を行っています。
「フケが治らない」「小鼻の赤みが続く」など気になる症状がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
【参考文献】
- Dessinioti C, Katsambas A. Seborrheic dermatitis: etiology, risk factors, and treatments: facts and controversies. Clin Dermatol. 2013 Jul-Aug;31(4):343-351(PMID: 23806151).
- Adalsteinsson JA, Kaushik S, Muzumdar S, Guttman-Yassky E, Ungar J. An update on the microbiology, immunology and genetics of seborrheic dermatitis. Exp Dermatol. 2020 May;29(5):481-489(PMID: 32125725).
- Chang CH, Chovatiya R. More yeast, more problems?: reevaluating the role of Malassezia in seborrheic dermatitis. Arch Dermatol Res. 2024 Mar 12;316(4):100(PMID: 38472524).
- Kim GW, Jung HJ, Ko HC, Kim MB, Lee WJ, Lee SJ, Kim DW, Kim BS. Dermoscopy can be useful in differentiating scalp psoriasis from seborrhoeic dermatitis. Br J Dermatol. 2011 Mar;164(3):652-6(PMID: 21155753).



