円形脱毛症

円形脱毛症とは

若い時期に発症することが多く、多くの場合は抜け毛が直径数cmの範囲で円形に起こり、数は一つの場合も多数の場合もあります。頭の髪に出ることがほとんどですが、眉毛やひげ、手足の毛にもできることがあります。発症すると自然に数ヶ月で治ることが多いですが、再度ほかの所に脱毛が出現し、繰り返すことが多いです。

円形脱毛症の診断

円形脱毛症ではじめは自覚症状はありませんが、脱毛前や脱毛が強い時期に軽いかゆみや違和感、淡い赤みがでることがあります。ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を使うと炎症が強い時期には感嘆符毛,漸減毛,黒点という特徴がみられ、炎症が落ち着いてくると黄色点がみられることがあります。また急速に進行している場合には脱毛している周りで髪を引っ張ると簡単に抜けてしまい、牽引試験(pull test)が陽性となります。爪にも変化がでるようになり、最も多いのは爪に小さな点状の凹みがでることで,発症時や症状が再び悪くなった時期に一致して横一列線状に並ぶこともあります。

注意しなければいけないのは円形脱毛症に似たような脱毛になる病気はたくさんあります。
皮膚エリテマトーデス、限局性強皮症、毛孔性扁平苔癬、トリコチロマニア(抜毛癖)、休止期性脱毛、男性型脱毛・女性型脱毛、頭部白癬や梅毒など感染症による脱毛などがあります。

円形脱毛症の診断にあたっては,脱毛症状の経過や治療歴,家族歴,既往歴,合併症も含めて診断します。どうしても他の脱毛する病気と見分けがつかない時は、採血の検査を行ったり、皮膚を一部取って顕微鏡の検査で観察する皮膚生検などを行って円形脱毛症の診断を行うこともあります。

円形脱毛症の種類

円形脱毛症と聞くと「コイン状」に一部分が抜けるイメージをお持ちの方も少なくありません。しかし、実際はさまざまな種類があり、大きく分けて以下の5種類に分類されます。

単発型

円形脱毛症のタイプでもっとも多い単発型は、丸いコイン状や、楕円形の脱毛が一つだけ発生するタイプです。このタイプを発症する方が一番多く、症状が進行すると数が増えて多発型になる場合があります。サイズや、発症する箇所は人によって異なります。

多発型

丸いコイン状や、楕円形の脱毛が複数発生するタイプです。初期から複数の脱毛が認められる場合と、単発型が進行することで、多発型に移行するケースがあります。また、複数の脱毛斑がつながって、1つの大きな脱毛斑になるケースもあります。適切な治療を行っても、治療には半年から 2年くらいかかる場合が多いと言われています。

全頭型

脱毛が広範囲に広がり、頭髪のほとんどが抜けてしまうタイプです。改善には治療が長期におよぶ場合が多いとされており、そのため治療並行してウィッグなどを使用しながら日常生活を送っている方も少なくありません。

汎発型

毛髪だけではなく、まゆげやまつげ、体毛まで、すべての毛が抜け落ちるタイプです。全身型は、円形脱毛症の中では最も重度なタイプと考えられています。

蛇行型(ophiasis:オフィアシス型)

側頭部から後頭部の生え際にかけて、帯状に細長く脱毛するタイプです。治療期間は数年にわたるケースがあり、治療が難しいタイプになります。

円形脱毛症の原因

円形脱毛症を発症するメカニズムはまだ完全に解明されていませんが、髪の毛を作り育てる過程で大切な役割を果たす毛の構造(毛包組織)に対する「自己免疫疾患」と考えられています。

自己免疫疾患とは、普段はウイルスや細菌など外からの異物と戦う免疫が、自分の体内の毛包組織を攻撃してしまい脱毛になってしまうということです。

毛の構造に関わる遺伝子の個人差を背景にして,疲労や感染症など肉体的,精神的ストレスが引き金となるとされますが、実際には明らかな誘因がないことも多いと言われています。注意したいことは精神的ストレスが円形脱毛症の直接の原因になるかは未だ科学的根拠が足りないとされています。

円形脱毛症は男女差や年齢層を問わず、幅広い人に発症する疾患ですが、円形脱毛症患者の8.4%に家族内発症があり、患者との関係が近いほど発症率が高い傾向があると言われています。また一卵性双生児での円形脱毛症の一致率は55%と言われており、遺伝子的な背景も関係していると言われています。

アトピー性疾患との合併率も高く、患者やその家族にアトピー素因が確認されており、円形脱毛症とアトピー素因は関連性が高いと考えられています。

皮膚を一部採取し病理学的検査で髪の毛の構造を観察すると、毛包の周囲に免疫反応を起こすリンパ球という免疫を担当する細胞が集まっていることが確認できます。

円形脱毛症の治療

円形脱毛症の治療で大切なことは、今患者様の状態が急性期にあるか症状固定期にあるか判断することです。

急性期というのは抜け始めということで,脱毛に気がついてから急速に脱毛の拡大が進む時期のことであり,牽引試験(pull test)をすると髪が抜けやすく、ダーモスコピーで観察すると感嘆符毛,漸減毛,黒点が多数見られ炎症が強い時期です。

症状固定期は脱毛症状がおおよそ半年を超えた時です。この時期はまだまだ脱毛の原因となっている炎症が強い状況が続く方と、炎症が収まってきた方に分かれます。ダーモスコピーで観察することでおおよそ見分けることができます。

ステロイドのぬり薬

脱毛の原因になっている皮膚の炎症を抑える治療になります。ご自宅でできる治療でもありまず開始させて頂く治療になります。頭ですのでローションタイプのステロイドのお薬を出すことが多くなります。

ステロイドの頭皮への注射(月1回)

ステロイドを直接炎症の起こっている毛包に注射で届ける方法となります。効果が比較的高い治療になりますが、注射なので多少の痛みがあります。月1回ほどの注射を続けることをおすすめしています。

エキシマライト(紫外線治療)

308nmという波長の紫外線を当てることで、皮膚の免疫を調節し円形脱毛症の炎症を抑え発毛させることができます。週1で通って頂き治療を行っていきます。保険適用の治療になり、当院でも扱っております。

局所免疫療法

皮膚にかぶれを起こすようなSADBEやDPCPというお薬を使い、皮膚の免疫を調節し発毛させる治療になります。ガイドラインにて多発型,全頭型,汎発型の症例に,年齢を問わず第一選択肢として行うようすすめられています。かぶれ症状が大変強くでてしまうこともありますので、アトピー性皮膚炎など湿疹が出やすい方には注意が必要になります。

ステロイドの点滴や飲み薬

範囲が広く、脱毛の勢いの強い方にはステロイドの点滴や飲み薬の治療を行うことがあります。特にステロイドの点滴はパルス療法といい、通常3日連続で点滴することが多く大学病院や総合病院で入院の上、行うことが一般的な治療になります。

オルミエント(バリシチニブ)

JAK阻害薬というタイプのお薬で、円形脱毛症の炎症を起こしているサイトカインというタンパク質を抑え発毛させるお薬になります。もともとアトピー性皮膚炎で保険適用の飲み薬でしたが、円形脱毛症にも保険適応になり広範囲が脱毛になってしまった患者様にはいい治療の選択肢となります。感染症にかかりやすくなるなど注意点もありますので、総合病院や大学病院で治療することが多い飲み薬になります。

円形脱毛症は、いろいろな治療の選択肢があり、脱毛の範囲や勢い、今どのような時期にあるかで治療の判断をします。私自身も狭い範囲ですが円形脱毛症になってしまった経験があります。患者様に合った治療を提案しますので当院にお気軽にご相談ください。

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