肌のトラブル

2025.09.12 肌のトラブル

扁平母斑(へんぺいぼはん)とは?原因から治療・保険適用まで徹底解説

「生まれつき茶色いあざがある」「赤ちゃんのときからある大きなシミのようなものが気になる」——そんなお悩みの方に多いのが扁平母斑(へんぺいぼはん)です。
扁平母斑は茶あざとも呼ばれ、良性の色素斑で、健康上の問題はありません。しかし顔や体の目立つ部位にあると、見た目の悩みにつながり、特にお子さまの将来を心配される親御さんから多くご相談をいただきます。
当院では、赤ちゃんから大人まで、Qスイッチルビーレーザーによる扁平母斑の保険適用治療を行っています。ここでは、扁平母斑の原因・遺伝との関係・レーザー治療の経過や費用・切除手術との違い・再発のリスク・治療回数などを詳しく解説いたします。

扁平母斑とは?

扁平母斑(nevus spilus)は、皮膚にメラニン色素が部分的に増えてできる茶色いあざです。単発のものは10~20%の人にみられます。ミルクコーヒーに似た色でもありカフェオレ斑(café-au-lait macule)と呼ばれることもあります。厳密には扁平母斑とカフェオレ斑は異なりますが日本では多くの場合、区別しません。大きさは数mmから数十cmまで様々で、形も楕円形や不整形など個人差があります。

色調

淡い茶色〜濃い茶褐色、中に黒い小さな斑点が混ざることもあり

発生部位

顔・首・体・腕・脚など全身にできる

出現時期

生まれつき(先天性)が多いが、思春期(遅発性)にでてくることもある

悪性化することはなく、医学的には良性ですが、外見的な悩みから治療希望が強いあざの一つです。

扁平母斑の原因と遺伝との関係

扁平母斑は、皮膚の表皮基底層に存在するメラノサイトが局所的に活発になり、メラニン色素が増えています。
原因として考えられているものは

  • 遺伝的要素
    • 生まれつきあることが多く、また一部の症例で家族内発生が見られるため、遺伝的素因が関与していると考えられています。
  • ホルモン変化
    • 思春期に出現する扁平母斑のタイプもあり、ホルモン変化が原因の一つです。思春期に出現する肩などの扁平母斑はベッカー母斑と呼ばれます。
  • 紫外線
    • 紫外線も扁平母斑の原因の一つと考えられています。

扁平母斑の診断と皮膚科専門医による見極め

扁平母斑に似ている色素斑としては、太田母斑、異所性蒙古斑、老人性色素斑、先天性母斑など多くの症状があり、扁平母斑との見極めが必要です。また直径1.5cm以上の扁平母斑が6個以上ある場合は、神経線維腫症ではないか疑い診察する必要があります。
正しく診断できないとレーザー治療の効果が期待通りに出ないこともあるため、経験豊富な医師による診断が重要です。
当院では皮膚科専門医でもあり日本レーザー医学会専門医である院長がダーモスコピー(拡大鏡)などを用いて正確に診断し、最適な治療方針をご提案しています。

扁平母斑の治療法

扁平母斑の治療は主にレーザー治療と切除手術に分けられます。

Qスイッチルビーレーザー(当院での第一選択)

仕組み

ルビー(694nm)の波長を持つレーザーが、メラニンに選択的に吸収され、メラニン色素を破壊して薄くする。

対象

赤ちゃんから大人まで治療可能。

メリット・デメリット

メリット:皮膚を大きく切らずに治療でき、体への負担が少ない。
デメリット:1回で薄くなることもあるが、複数回の治療が必要になることが多い。再発することがある。

当院では保険適用でQスイッチルビーレーザー治療を行っており、生後早期からの治療が可能です。
Qスイッチルビーレーザーの詳細や当院の症例についてはこちらもご参照ください。

切除手術

仕組み

あざのある皮膚を外科的に切り取って縫合する方法。

対象

小さい扁平母斑や、レーザーが効きにくい場合。

メリット・デメリット

メリット:一度で取りきれる可能性が高い。
デメリット:傷跡が残るため、顔や広範囲のあざには不向き。

その他の方法

IPL(光治療)や外用薬は基本的に効果がなく、あまり推奨されていません。

扁平母斑のレーザー治療の効果

扁平母斑の治療はレーザー治療が第一選択になりますが、全例で効果があるわけではなく、レーザーの有効率も10~50%と様々です。またレーザー治療で薄くなっても、数ヶ月から数年後に再発することもがあります。そのため、治療後も経過観察を行いながら必要に応じて追加治療を行うことがあります。
レーザー治療の効果をみるために、1回目のレーザー治療を扁平母斑の一部のみに行うこと(試験照射)があります。数ヶ月の経過をみて薄くなっているようでしたら、残りを含めてレーザー治療を継続していきます。

過去の研究からレーザー治療が効きやすい扁平母斑は、顔や首にあるタイプや周りとの境界がギザギザ(辺縁不整)していて地図状のタイプとわかっています(PEPARS,2016 ; 111 : 41―48., 日皮会誌:129,169-174,2019 )。

扁平母斑のレーザー治療の経過

レーザー治療後は以下のような経過をたどります。

直後

赤みや軽い腫れが出ます。

数日後

かさぶたや茶色い痂皮が形成されます。

1〜2週間後

かさぶたが自然に取れ、ピンク色になります。

数ヶ月後

色調が安定し、あざが薄くなったかどうかが確認できます。

シミ(老人性色素斑)の場合はレーザー治療の効果が治療後2週間でわかりますが、扁平母斑のレーザー治療の効果は数カ月後にわかります。
扁平母斑は、一度で完全に消えることは少なく、数回の照射を重ねて改善していくのが一般的です。
レーザー治療後は、テープや軟膏とガーゼによる保護を1週間ほど行います。

扁平母斑の治療回数と再発

治療回数

平均で2〜5回程度が必要です。範囲や濃さによっては10回以上かかることもあります。

再発

一度薄くなっても、数年後に再び色が戻ることがあります。特に思春期や妊娠・出産など、ホルモン変化の時期や強い紫外線によって再発しやすい傾向があります。

予防

紫外線対策を徹底することで再発リスクを減らすことや、再発までの期間を伸ばすことができる可能性があります。

扁平母斑治療の費用と保険適用

保険適用について

扁平母斑は、ルビーレーザーに限り保険適用でレーザー治療が可能です。

費用の目安

Qスイッチルビーレーザー 保険3割負担時、1回あたり6,000円〜12,000円程度(照射範囲による)
例えば、直径3cm程度でしたら3割負担で7,000円の自己負担となります。都内の高校生までのお子様は医療費が無料になります。保険適用の場合、治療の間隔は3ヶ月ごとになります(4月1日にレーザー照射を行った場合、原則次回照射は7月2日以降になります)。
切除手術の場合は大きさや部位により異なりますが、3割負担で7,000円〜3万円程度となります。

赤ちゃんの扁平母斑治療について

赤ちゃんの肌は薄くデリケートですが、扁平母斑は早期から治療した方が効果的とされています。

早期から治療した方が効果的な理由

  • 過去の研究でも大人よりもお子様の方がレーザー治療の効果が高い傾向であることがわかっています(日皮会誌:129,169-174,2019)。
  • 皮膚が薄い方がレーザーがしっかり届く
  • 成長に従い濃くなる前に治療ができる

当院では安全性に配慮しつつ、生後早期からレーザー治療を行っています。

当院の症例

症例【1歳女児】腹部の扁平母斑

生まれつきのお腹の扁平母斑にQスイッチルビーレーザー照射を2回行いました。茶色さがなくなり薄くなっています。

【施術】Qスイッチルビーレーザー治療
【費用】約6,000円~12,000円(税込)保険診療3割負担の場合(照射面積で変わります)
(本施術では総額約12,000円(税込))
【副作用・リスク】腫れ・水ぶくれ・色素沈着など

まとめ

扁平母斑は生まれつきの茶色いあざで、良性ですが見た目の問題から治療希望が多い疾患です。市販薬やスキンケアで改善することはなく、保険適用のQスイッチルビーレーザー治療が第一選択となります。
赤ちゃんから治療可能で、早期に始めるほど効果が高い傾向があります。再発の可能性はあるものの、適切な治療と経過観察により、満足できる治療効果が得られることがあります。
「赤ちゃんのあざが心配」「何回の治療で治るのか知りたい」「費用や保険のことを詳しく知りたい」——そのようなお悩みがある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。

扁平母斑についてはこちらのページにもまとめておりますのでご参照ください。

よくある質問

Q1. 扁平母斑の原因は何ですか?遺伝するのでしょうか?

A. 扁平母斑は皮膚のメラノサイトが局所的に活性化しておりメラニンが増えた症状です。はっきりとした原因は解明されていませんが、一部には遺伝的な要素も関与していると考えられています。またホルモンの影響や紫外線も関与している可能性があります。赤ちゃんの時点ですでに確認できることも多く、思春期など後天的に現れる場合もあります。

Q2. 扁平母斑は自然に消えることはありますか?

A.基本的には自然に消えることはありません。成長とともに目立ちにくくなるケースもありますが、多くは残ります。気になる場合はQスイッチルビーレーザー治療や切除手術が有効です。

Q3. 扁平母斑は保険適用で治療できますか?費用はどれくらいですか?

A.Qスイッチルビーレーザーによる治療は保険適用となる場合があります。費用は3割負担の場合、6,000円~12,000円程度となります。

Q4. 赤ちゃんや小さい子どもでもレーザー治療は可能ですか?

A.はい、生後間もない赤ちゃんの頃から治療が可能です。3歳未満の方がレーザーの効果が高い傾向にあり、また成長とともに色が濃くなり、範囲が広がることがあるため、早期の治療がすすめられます。当院では生後0ヶ月のお子様から治療を行っています。

Q5. 扁平母斑のレーザー治療は何回くらい必要ですか?

A.扁平母斑の治療は1回で完全に消えることは少なく、2〜5回程度の照射が必要になることがあります。レーザーの反応は個人差が大きく、色の濃さ・範囲・部位によって回数は変わります。レーザーの効果がないこともあり、その場合は治療を1回で終えることもあります。

Q6. レーザー治療後に再発することはありますか?

A.扁平母斑は再発することがあります。一度薄くなっても、数ヶ月から数年後に再び色が戻るケースがあります。そのため、レーザー治療は「薄くする」「目立ちにくくする」ことを目的に考えると良いでしょう。

Q7. 扁平母斑は切除手術で治せますか?

A.はい、小さい範囲であれば切除手術で完全に取り除くことが可能です。ただし、切除の場合は傷跡が残るリスクがあるため、顔など目立つ部位や大きめの扁平母斑ではレーザー治療が第一選択になることが多いです。

参考文献>

  • Acta Inform Med. 2025;33:158-161.

この記事を書いた人

上條 広章

上野御徒町ファラド皮膚科 院長

上條 広章(かみじょう ひろあき)

  • 資格
    • 医学博士(東京大学大学院医学系研究科)
    • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
    • 日本美容外科学会(JSAS)認定 美容外科専門医
    • 日本レーザー医学会専門医
  • 所属学会
    • 日本皮膚科学会
    • 日本美容外科学会(JSAS)
    • 日本美容皮膚科学会
    • 日本レーザー医学会
  • 受賞歴
    • 第7回日本皮膚悪性腫瘍学会賞(石原・池田賞)
    • 第20回マルホ研究賞
    • Poster Prize, 47th Annual Meeting of European Society for Dermatological Research

略歴

2012年 東京大学医学部医学科 卒業
2014年 藤枝市立総合病院 初期研修 修了
2014年 東京警察病院 皮膚科
2016年 東京大学医学部附属病院 皮膚科
2019年 東京大学医学部附属病院 皮膚科 助教
アトピー性皮膚炎専門外来、皮膚悪性腫瘍専門外来、レーザー専門外来担当
2021年 都内大手美容外科 入職
2022年 都内大手美容外科 本院 部長
美容皮膚科治療監修を担当
2022年 上野御徒町ファラド皮膚科 開院

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