粉瘤とは？
粉瘤（ふんりゅう）は、皮膚にできる良性腫瘍の一種で、表皮嚢腫（ひょうひのうしゅ、epidermal cyst）やアテローム（アテローマ、atheroma）とも呼ばれます。
皮膚の内側に袋状の構造物ができ、その中に本来であれば自然に剥がれ落ちる角質や皮脂が溜まってしまうことで発生します。
体のどこにでもできますが、顔・首・耳のうしろ・背中・おしりなどによく見られます。
また、まれにウイルス（尋常性疣贅ウイルス）によって足の裏にできることもあります。
粉瘤は炎症を起こすと赤く腫れ、痛みを伴うこともあります。
粉瘤の原因
粉瘤ができる明確な原因は解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
- 皮膚がこすれるなどの刺激により、表皮の一部が真皮内に入り込む
- 足の裏にできるイボのウイルス（ヒトパピローマウイルス）によって生じる特殊型の粉瘤
なお、「粉瘤は不潔にしているとできる」と誤解されがちですが、清潔さとは関係ありません。
粉瘤の特徴や症状
粉瘤は、やや盛り上がった数mm～数cmの半球状のしこりとして現れ、ゆっくりと大きくなるのが特徴です。大きいものですと10cm以上になることもあります。
中央に黒い点（開口部）が見えることがあり、圧迫すると特有の臭いを伴う白色〜黄白色のドロドロした内容物が出てくることがあります。
長期間放置すると、袋の中に角質や皮脂がたまり続け、徐々にサイズが大きくなります。
粉瘤と間違われやすい他の疾患との見分け方
粉瘤は、医学的には表皮嚢腫と呼ばれる皮膚疾患です。ここでは、粉瘤とそれに類似したできものについて紹介します。
ニキビ(尋常性ざ瘡)の特徴
にきびは毛穴の詰まりや皮脂の過剰分泌などによる毛穴の炎症です。
初期は白く盛り上がり、症状がすすむと、炎症や皮脂の酸化により赤ニキビや黒ニキビになります。
脂肪腫の特徴
皮膚の深い層で脂肪細胞が増殖してできる腫瘍であり、「脂肪の塊」と呼ばれています。
皮膚の色は変わらずゴムのような柔らかさがありますが、見た目はほぼ粉瘤と似ています。粉瘤よりも深い位置にあります。
おでき(せつ)の特徴
一般的におできと呼ばれるものは、「癤（せつ）」と呼ばれる皮膚の感染症です。
おでき（癤）は皮膚に常在している黄色ブドウ球菌の感染によって発症します。
汗をかいたまま放置したり、免疫が低下していたりすると感染が起こり、おでき（癤）ができてしまいます。
お風呂のナイロンタオル内に菌が増えてしまい原因となることもあります。
早期から痛みを感じることが多く、炎症が強いと粉瘤と区別がつきにくい場合もあります。
石灰化上皮腫（毛母腫）の特徴
石灰化上皮腫は、皮膚の一部分が石灰のようにゴツゴツと硬いしこりとして触れる良性腫瘍の一つです。
毛母腫（もうぼしゅ）とも呼ばれます。はっきりとした原因は分かっていませんが、若年者に発生することが多いと言われています。
皮膚の色は変わらないか、皮膚が薄い場合は腫瘍が透けて、黄白色や青黒い色に見える場合があります。
稗粒腫
目の周りなどうぶ毛が生える部分にできます。白〜黄白色の1〜2mm大の小さな粒で、触ると硬さを感じます。針もしくはレーザーで穴を開けて除去することができます。
外毛根鞘嚢腫（毛髪嚢腫）
頭部に発生しやすいタイプです。触ると通常の粉瘤よりも硬さを感じます。
脂腺嚢腫
粉瘤と似ていますが、中身が黄色っぽい液体状で、首やわきに多発することがあります。
粉瘤の治療法
粉瘤の内容物だけを取り除いても、袋の壁（嚢胞壁）が残ると再発の原因になります。
根治には袋ごと取り除く外科的手術が必要です。
当院では状態に応じて、くりぬき法と紡錘形に切除する方法の２通の方法を行っています。いずれの手術方法も当院では日帰り手術が可能です。
くりぬき法について
専用のパンチ器具で小さな穴を開け、袋を摘出する方法です。
従来のメス切開より傷跡が小さく、短時間で処置が可能です。
当院のくりぬき法の流れ
- 患部にペンでマーキングをします
- 患部に局所麻酔薬を注入します
- パンチと呼ばれる器械を使って、患部の中心に穴を開けます
- 患部を強く圧迫して、くり抜いた穴から内容物を除去します
- ピンセットや医療用のハサミなどを用いて、丁寧に袋を除去します
- 取り残しがないかを確認します
- 必要に応じて縫合して終了です
※患部の状態によっては縫合しない方が傷の治りがきれいになることがあります
紡錘形に切除する方法
粉瘤の周囲を紡錘形に切開し、袋の全周を目視で確認しながら除去する方法です。
再発リスクを最小限に抑えることができます。
当院の紡錘形に切除する方法の流れ
- 患部にペンでマーキングをします
- 傷が目立ちにくい方向に紡錘形にデザインします
- 患部に局所麻酔薬を注入します
- メスで丁寧に皮膚を切開します
- 粉瘤の壁を目視で確認し、周囲の正常皮膚からメスや医療用のハサミで丁寧に剥離します
- 粉瘤の壁が破れておらず、全周とれたことを確認します
- 止血を行います。
- 中縫い(真皮縫合)を高品質な溶ける糸であるPDSで縫合します
- 皮膚を適切な太さのナイロン糸で縫合します(表皮縫合)
- 1週間ほどで抜糸となります
手術の注意点
炎症が強い粉瘤は、袋の壁が壊れていることがあり、炎症中の摘出は袋の壁を十分に取り除くことができず再発リスクが高まります。
この場合は、まず排膿処置で炎症を落ち着かせ、炎症が十分なくなった時期に手術で粉瘤の袋を取り出す方法の方が結果的に傷も小さく、 再発リスクも低くなりますので当院ではそのような方針で治療を行っております。
また、炎症後の粉瘤では瘢痕（固い組織）ができており、くりぬき法が適さない場合もあります。
当院では状態に応じて最適な方法を選択しています。
手術後について
- 当日は入浴・激しい運動・飲酒を控える
- シャワーは当日から可能(患部は翌日から洗えます)
- 傷跡の落ち着きには約3ヶ月を要します
- 抜糸後は茶色いテープ保護を3〜6ヶ月推奨
一時的に傷の盛り上がり、硬さ、赤み、かゆみ、違和感がでることもあります。 通常問題ないことがほとんどですが術後1ヶ月、3ヶ月を目処に診察にいらしてもらえますとよりご安心頂けると思います。 また気になる点がある方は、いつでもご相談ください。
粉瘤手術の費用
料金表
| できものの手術 | 約7,000円~13,000円 |
|---|
- すべて税込です。
- 3割負担の場合の料金です。
- 都内在住で中学生までの子どもは公費負担となり実費は0円です。
当院の特徴
当院では、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医であり、美容外科分野にも精通した院長が診察・手術を担当しています。
粉瘤の正確な診断と、症状・部位に応じた最適な治療法をご提案いたします。
しこりやできものが気になる方は、早めの受診をおすすめします。
よくある質問
手術は痛みがありますか？
注射による局所麻酔は少し痛みがありますが、麻酔が効くと手術の痛みはなくなります。手術中に痛みを感じた場合は、麻酔の追加も可能ですのでお気軽にご相談ください。
背中の2cmの粉瘤除去はいくらでできますか？
保険適用3割負担の場合、手術費用や病理検査費用、処方料含めた費用は、7000円程度になります。
入浴はいつからできますか？
1週間後の抜糸後に基本的には入浴が可能です。
抜糸はいつになりますか？
顔の場合は、5日～1週間後、背中など体の場合は1週間後が基本になります。お尻や手・足など部位や大きさによっては抜糸が2週間後になることもあります。
傷跡は残りますか？
切除して縫合する場合、線の傷跡ができます。傷跡は3ヶ月ほど赤みがありますが、徐々に赤みは減っていきます。傷跡をできるだけ綺麗にするため、手術後はマイクロポアテープ(茶色テープ)での保護をおすすめしています。
粉瘤を潰すとどうなりますか？
感染や炎症が起こり腫れてしまうことがあり、ご自身で潰すことはおすすめできません。
痛くない粉瘤も手術した方がいいですか？
徐々に大きくなることもあり、自然になくなることは基本的にないために気になる粉瘤は早期に手術し除去することがおすすめです。
粉瘤の手術跡はどのくらいで目立たなくなりますか？
粉瘤の手術跡の赤みは個人差がありますが、3〜6ヶ月ほどで徐々に薄くなっていくケースが多いです。術後は紫外線ケアとテープ保護を行ってください。傷が盛り上がる、かゆみが続く場合はご相談ください。
市販薬で治せますか？
粉瘤は皮膚の内部に角質や皮脂がたまってできる良性腫瘤であり、市販薬での改善は困難です。症状がある場合は早めに皮膚科での診断を受けましょう。
