2025.09.12 肌のトラブル
汗管腫とは?原因から治療法・保険適用の有無まで徹底解説

「まぶたに小さなブツブツが増えてきた」「イボのようだけど市販薬で治らない」——そのような症状でお悩みの方に多いのが汗管腫(かんかんしゅ)です。
汗管腫は良性の皮膚腫瘍ですが、美容的に目立つため皮膚科を受診される方が多くいらっしゃいます。その一方、「放置したらどんどん増えて目立ってきた」というケースも少なくありません。ここでは汗管腫の原因・市販薬で治せるかどうか・保険適用の有無・当院で行っている治療法について、皮膚科専門医の視点から詳しく解説します。
汗管腫(かんかんしゅ)とは?

汗管腫(syringoma)は、皮膚の汗腺(エクリン汗腺)の導管が増殖してできる良性腫瘍です。汗は皮膚の奥で作られ、導管を通って肌表面に出てきますがその導管が真皮に増えてしまい汗管腫ができます。特にまぶたや頬に多く見られ、直径1〜3mmほどの正常皮膚色〜淡黄色の小さな盛り上がりとしてみられます。また顔だけでなく、首や腹部、胸など全身にみられ、多発することもあります。目周りのタイプ(eyelid type)、全身に出るタイプ(eruptive syringoma)、体の一部に出るタイプ(localized syringoma)の3タイプに分かれます。
女性に多く、20〜30代で気づかれることが多いですが、加齢とともに数や大きさが増えることもあります。悪性化することはありませんが、自然に消えることはほとんどないのが特徴です。
汗管腫は、汗の管の腫瘍ですので汗が出やすい気温が高い夏場に大きくなり目立つことがあります。夏場は汗管腫に汗がたまり、みずみずしい青っぽさがみられることがあります。
汗管腫の原因
汗管腫はアジア人に多く、体質や遺伝的要因が関与していると考えられています。紫外線やホルモンバランスの変化、外傷、熱刺激で増えるケースもありますが、はっきりした予防法は確立されていません。
「スキンケアが悪いからできる」というわけではなく、ニキビや稗粒腫とは発生の仕方が異なります。また汗管腫で増えた導管は肌の深くにもあるため、生活習慣の改善で治すことは困難です。
稗粒腫との鑑別が大切

まぶたに小さな白い粒ができた場合、稗粒腫(はいりゅうしゅ・ひりゅうしゅ)と間違われることがよくあります。
稗粒腫
角質がたまった袋(嚢腫)が皮膚にできている。摩擦や乾燥、傷でできやすい。白いポツポツで1~2mmほどの大きさ。針で開けると角質が出る。
汗管腫
汗腺の導管が増殖した腫瘍。正常皮膚色〜淡黄色でやや深く存在し、数が多い。
見た目が似ているため、皮膚科での正しい診断が必要です。当院では経験豊富な医師がダーモスコピー(拡大鏡)などで診断を行い、治療方針を決めています。汗管腫の中に稗粒腫が混ざっていることも多く、両方の治療が必要なこともあります。
市販薬で汗管腫は治せる?
よく質問されるのが「市販のイボ用の薬で取れませんか?」という点です。結論から言うと、汗管腫は市販薬では治りません。
市販の「いぼ用の外用薬」はサリチル酸や尿素であり、角質を溶かす作用がありますが、汗管腫は皮膚のやや深い部分に存在するため効果がありません。むしろ刺激で赤みや色素沈着を起こすリスクがあります。
基本的には塗り薬では効果がありませんが、クリニックの専売コスメであるトレチノインやニキビ薬として使われるディフェリンゲル(アダパレンゲル)では汗管腫に効果があったという報告があります(Dermatology. 1994;189:105-6., J Cutan Immunol Allergy. 2022;5:97–99. )。実際には効果はあまり高くありませんが、まずは塗り薬から試してみたい方はこちらから試す方法もあります。
汗管腫の治療法
汗管腫の治療は「いかに傷を作らず、皮膚深くにもある汗管腫細胞を減らすか」がポイントです。汗管腫は深い部分に存在するため、削りすぎると傷跡や色素沈着のリスクがあります。逆に削るのが浅すぎるとすぐに再発してしまいます。そのため当院では、汗管腫の大きさや場所、個数、患者様の肌質に合わせて治療を選んでいます。
ポテンツァ(アグネスモード、ワンニードル)

ポテンツァのアグネス (ワンニードル)モードは1本の極細針を用いて高周波を流す機器です。アグネスモードを使うと、汗管腫の原因となる汗腺にピンポイントで熱を与えることが可能です。熱が加わり汗管腫が徐々に小さくなっていきます。さらに皮膚表面は加熱されないため、傷跡や色素沈着のリスクを下げることができます。1回の治療では終わらず、2~3ヶ月ごと3回ほどの治療が必要です。費用は、20個以下33,000円(税込)、40個以下 55,000円(税込)となります。
メリット:皮膚表面へのダメージを最小限に抑えつつ、複数個を効率的に治療できる。
デメリット:複数回の施術が必要になることがある。
ポテンツァのアグネスモード(ワンニードル)についてはこちらもご参照ください。
サージトロン(ラジオ波メス)やCO2レーザー
古くから行われてきた方法で、盛り上がった病変を蒸散します。ただし汗管腫は深いため、再発や凹みのリスクが高い欠点があります。大きい汗管腫を取りたい、一部の汗管腫を取りたい方におすすめすることがあります。
メリット:腫瘍を破壊でき、効果が高い。
デメリット:施術後にテープ保護や軟膏処置が必要でダウンタイムがあり、施術に時間がかかる。
メスや皮膚パンチによる切除
汗管腫をメスや皮膚パンチによりくり抜きます。くり抜いた跡は縫合糸で縫うこともありますし、オープントリートメントといって縫わずにテープや軟膏で肌を再生させることもあります。皮膚の深いところにある汗管腫細胞を除去することができますが、傷跡やへこみが残る可能性があります。
メリット:腫瘍をしっかり除去でき、効果が高い。
デメリット:施術後にテープ保護や軟膏処置が必要でダウンタイムがあり、施術に時間がかかる。
当院ではポテンツァのアグネスモードやサージトロン、メスや皮膚パンチによる切除を組み合わせることで、効果とダウンタイムのバランスをとりながら治療しています。
汗管腫は保険適用になる?
汗管腫は良性腫瘍であり、また美容的な問題が主のため、通常は保険適用外(自費診療)となります。
一方で、他の良性・悪性腫瘍が否定できない場合や、日常生活上支障がある場合は保険適用で除去することが可能な場合もあります。
「保険が効くかどうか知りたい」「汗管腫かどうか知りたい」という患者様も、診察で正確に診断し対処法や治療法をご説明しております。
治療の流れ(当院の場合)
診察・ダーモスコピーでの鑑別
汗管腫か稗粒腫かまた違うものか正確に診断します。
治療方針のご提案
部位や数に応じて「塗り薬」「サージトロン」「ポテンツァ」「メスや皮膚パンチによる切除」を中心にご提案。
施術
サージトロンや切除では局所麻酔下、ポテンツァのワンニードルでは表面麻酔を行なった上で安全に治療を行います。
アフターケア
色素沈着や赤みを防ぐためのスキンケア指導も行います。
汗管腫治療で大切なこと
- 市販薬や自己処置では治らない
- 稗粒腫や他のイボとの見極めが必要
- ダウンタイムと効果のバランスを考えた治療が大切
- 治療は保険適用外が基本
当院ではポテンツァのアグネスモードとサージトロン、切除を組み合わせたオーダーメイド治療を行っており、患者さま一人ひとりに合った最適なアプローチをご提案しています。
まとめ
汗管腫はまぶたや頬にできる小さな良性腫瘍で、市販薬やセルフケアでは治せません。稗粒腫や脂漏性角化症など他のイボとの見極めが重要で、根本的な改善にはクリニックでの治療がおすすめです。
当院ではポテンツァ(アグネスモード)と他の治療を組み合わせることで、再発を防ぎつつ美しい仕上がりを目指しています。
「長年まぶたのブツブツに悩んでいる」「市販薬を試したけど効果がなかった」「このイボがなにか知りたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
汗管腫についてよくある質問(Q&A)
Q1. 汗管腫は自然に治りますか?
A. 汗管腫は自然に消えることはほとんどありません。放置していても悪性化することはありませんが、数が増えたり、目立ちやすくなる傾向があります。適切な診断が必要ですのでご相談ください。
Q2. 汗管腫と稗粒腫の違いは何ですか?
A. 稗粒腫は角質がたまって袋状になった1~2mm大の白いイボで、針で開け押し出すと内容物が出てきます。汗管腫は汗腺の導管が増殖してできた腫瘍で、正常皮膚色〜淡黄色の小さな盛り上がりが多数できます。ともに目周りにできやすい特徴があり、見た目も似ているため、見極めが必要です。
Q3. 市販薬やスキンケアで汗管腫は治せますか?
A.トレチノインやディフェリンゲルが効いたとの報告もありますが、基本的には市販のいぼ用薬やニキビ薬では汗管腫は改善しません。皮膚のやや深い部分にあるため、外用薬は効果が届かないのです。むしろ刺激で赤みや色素沈着を残すリスクがあるため、市販薬での自己治療はおすすめできません。
Q4. 汗管腫はどの治療法が一番効果的ですか?
A. 汗管腫の治療には複数の選択肢があります。当院ではポテンツァのワンニードル治療とサージトロン、切除法を組み合わせることで、効果とダウンタイムのバランスをみながら治療しています。
Q5. 汗管腫の治療は痛いですか?
A. サージトロンや切除法による治療は局所麻酔を行ったうえで実施するため、痛みは最小限に抑えられます。ポテンツァのワンニードルは麻酔クリームを使った表面麻酔を行うことでややチクチク感がありますが、ほとんどの方が耐えられる程度です。
Q6. 汗管腫が再発しやすいのは本当ですか?
A. 汗管腫は汗腺が真皮の深いところまで増えていることがあります。そのため、一度切除しても皮膚の深いところに残った汗管腫細胞が増えて再発することがあります。そのため、完全に「一生再発しない」というわけではありません。しかし、ポテンツァワンニードルやサージトロン、切除法で的確に処置すれば、長期的に目立たなくすることが可能です。
Q7. 治療後のダウンタイムはどれくらいですか?
A. ポテンツァワンニードルでは赤みや小さなかさぶたが数日程度残ります。メイクも翌日から可能であり、メイクで隠せる程度で、日常生活に大きな支障はありません。サージトロンやメス・皮膚パンチによる切除後は2週間ほどのテープ保護や軟膏処置が必要です。
Q8. 汗管腫の治療は保険が使えますか?
A. 汗管腫は良性腫瘍で美容的な理由による治療がほとんどのため、基本的には保険適用外(自費診療)となります。ただし悪性腫瘍や他の皮膚腫瘍が否定できない場合や、稗粒腫や脂漏性角化症など他の皮膚疾患では保険が適用される場合もありますので、まずは診察で正確な診断を受けることが大切です。
<ポテンツァについて>
- 医薬品医療機器等法上の承認:未承認
- 入手経路:当院では医師の判断の下、輸入代行業者から入手
- 国内の承認医薬品等の有無:同じ性能をもつ承認医療機器は存在していません。
- 諸外国における安全性などに係る情報:諸外国において、治療に伴う重大な副作用の報告はありません。
この記事を書いた人

上野御徒町ファラド皮膚科 院長
上條 広章(かみじょう ひろあき)
- 資格
- 医学博士(東京大学大学院医学系研究科)
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本美容外科学会(JSAS)認定 美容外科専門医
- 日本レーザー医学会専門医
- 所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本美容外科学会(JSAS)
- 日本美容皮膚科学会
- 日本レーザー医学会
- 受賞歴
- 第7回日本皮膚悪性腫瘍学会賞(石原・池田賞)
- 第20回マルホ研究賞
- Poster Prize, 47th Annual Meeting of European Society for Dermatological Research
略歴
2012年 | 東京大学医学部医学科 卒業 |
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2014年 | 藤枝市立総合病院 初期研修 修了 |
2014年 | 東京警察病院 皮膚科 |
2016年 | 東京大学医学部附属病院 皮膚科 |
2019年 | 東京大学医学部附属病院 皮膚科 助教 アトピー性皮膚炎専門外来、皮膚悪性腫瘍専門外来、レーザー専門外来担当 |
2021年 | 都内大手美容外科 入職 |
2022年 | 都内大手美容外科 本院 部長 美容皮膚科治療監修を担当 |
2022年 | 上野御徒町ファラド皮膚科 開院 |