2023.03.03 肌のトラブル
子どもが皮膚をかきむしるのはなぜ?|かゆみの原因や対処法を知って正しく治療を
子どもの肌は水分をたっぷり含んでいて、肌トラブルが少ないと思われがちです。
しかし実際には子どもの肌は未完成で、乾燥や汗など外からの刺激にとても弱く肌荒れしやすいことが特徴です。
今回は子どもの肌トラブルの原因や疾患、ホームケアなどをご説明します。
子どもの肌の特徴
肌の構造は、外側から表皮・真皮・皮下脂肪の順になっています。
もっとも外側の表皮のうち、空気に直接触れている部分を角層といいます。
肌には外部の刺激や細菌・ウイルスなどから身体を守るバリア機能が存在し、角層がその役割を担い、角層表面は皮脂で覆われ乾燥や刺激から肌を守っています。
子どもは大人以上に角層が薄く、非常にデリケートで肌のバリア機能は不安定な状態です。
大人の角層は0.01〜0.03mm程度、子どもの場合は大人の1/3〜半分程度の薄さといわれています。
そのため、子どもの頃は細菌・ウイルスへの感染や、湿疹、乾燥などの肌トラブルが増える傾向があります。
新生児期(生後~4週間頃)
生まれたばかりの赤ちゃんは、母親から受け取ったホルモンのはたらきにより、一時的に皮脂の分泌量が増加します。
乳児期(生後4週間~生後1年頃)
母体からの影響がなくなります。生後3ヵ月頃から、皮脂の分泌量が少しずつ減少し始め、乾燥が目立つようになってきます。
幼児期(生後1年~6歳頃)
生涯の中でも、もっとも皮脂の分泌量が少なくなります。
学童期(6歳~12歳頃)
思春期を迎える頃に、皮脂の分泌量が増加します。
子どもが皮膚をかきむしる!その原因とは?
皮膚のかゆみは、外部の刺激などによる外的要因と、一人ひとりの体質などによる内的要因が複雑に重なり合って生じ、原因を特定できないケースもあります。
主な外的要因、内的要因には以下のようなものが考えられます。
- 外的要因…薬剤、アレルゲン、化学物質、金属、温度の変化 など
- 内的要因…アトピー素因、アレルギー体質、肌のバリア機能低下 など
代表的な皮膚疾患について
子どものかゆみに関する代表的な疾患として、主に以下のようなものがあります。
小児アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚疾患です。
アトピー性皮膚炎は、肌のバリア機能が低下し、外部からのアレルゲンが侵入しやすい状態になっているといわれています。炎症を引き起こした肌をかくことによって、さらにバリア機能が低下する悪循環に陥ります。
子どもの肌は成長過程によって皮脂の分泌量に変化がみられ、小児アトピー性皮膚炎は肌のバリア機能が未成熟な乳幼児期に発症しやすいことが知られています。
また乳児期には顔や頭を中心にじくじくとした赤い湿疹、幼児期や学童期には四肢の関節に赤みやブツブツが生じるなど、発達に伴って症状が異なることが特徴です。
アトピー素因などの体質、ハウスダストやダニなどによるアレルギー反応などが原因とされています。
皮膚科では、保湿剤による肌のバリア機能の回復、外用薬、内服薬などの処方が処方されます。
乳児湿疹、乳児脂漏性皮膚炎
乳児湿疹は、新生児期から乳児期にかけてみられる湿疹の総称です。
口のまわりや顎まわり、首まわり、手首や足首など、全身に生じます。
また、生後2~4週以降の赤ちゃんは頭部や額などにかさぶたができる乳児脂漏性湿疹を生じることがあります。
乳児湿疹、乳児脂漏性湿疹のどちらも患部をよく洗い清潔を保つことにより、自然によくなっていく場合が多いです。
ただし、かゆみや赤みが強い、症状が長引いている場合にはアトピー性皮膚炎の可能性があります。
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の判別は難しいため、皮膚科を受診するようにしましょう。
伝染性膿痂疹(とびひ)
伝染性膿痂疹は、ブドウ球菌や溶血性連鎖球などの細菌感染により起こる皮膚疾患です。
火事の飛び火のように患部から離れた部位などへ急速に症状が広がることから、「とびひ」とも呼ばれています。
かさぶたができるものや水ぶくれができるものがあります。
かさぶたができるタイプは小さな水ぶくれや赤みが生じ、時間とともにかさぶたになり、発熱やのどの痛みなどを伴うことがあります。
水ぶくれができるタイプはかゆみを伴う水ぶくれや赤みが生じ、水ぶくれが破れてただれが引き起こされます。
特に夏の時期に赤ちゃんや子どもに発生しやすいです。
乾燥肌や虫刺され、あせもなどで皮膚のバリア機能が低下したところに細菌が感染して発症します。皮膚科では、抗菌薬の飲み薬や塗り薬が処方されます。
伝染性紅斑(りんご病)
伝染性紅斑はりんご病とも呼ばれ、子どもに多く発生するウイルス性の皮膚疾患です。
軽度の風邪症状が生じた約1週間後に、頬や腕、足などに発疹が現れます。
原因はパルボウイルスB19への感染で、 冬〜春に発生することが多く、特に5〜10歳頃にかかりやすいです。咳やくしゃみなどによる飛沫感染により生じます。
子どもの場合は特に治療は必要ありません。
ただし発疹や風邪症状がなくなってから数週間は、紫外線や発熱、運動、ストレスなどにより再発する可能性があります。症状が強い場合や長引く場合は、皮膚科を受診しましょう。
伝染性軟属腫(水いぼ)
伝染性軟属腫は別名を水いぼといい、ウイルス感染による皮膚疾患の一つです。
いぼは1〜5mm程度の大きさで、腹部や背中など全身に広がることがあります。
ポックスウイルスの感染で、主にタオルの共有や直接患部に触ることによる接触感染により生じます。
通常、半年から5年程度で自然治癒しますが、かゆみがある場合や長引く場合には、内服薬を検討する場合もあります。
あせも
あせもはなんらかの原因によって汗が体外へ排出できなくなり、皮膚内に汗が溜まることによって起こる湿疹です。
脇の下や首まわりなどに赤みのある小さな発疹が、大量に汗をかいた部分に現れます。
強いかゆみのほか、熱感や肌の違和感を覚えることがあります。
通常は数日で自然に治癒しますが、かゆみや炎症を抑える薬を使用することもひとつの方法です。
治りが遅い場合やかゆみがひどいときなどは、皮膚科を受診しましょう。
手足口病
手足口病は、口の中や手のひら、足の裏に小さな水ぶくれができる皮膚疾患です。
エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによるウイルス性の感染症で、子どもの夏の三大感染症のひとつです。
口の中や手のひらなどの発疹、発熱のほか、口内炎により食べ物を摂取できないこともあります。
通常は自然治癒しますが、こまめに水分を摂って脱水症状に気を付けましょう。
子どもの肌トラブルを防ぐには
保湿
かゆみや乾燥を予防する基本は保湿です。
保湿剤を塗ることで肌にうるおいを与え、皮膚のバリア機能を高めるサポートをしてくれます。
朝の着替え時やお風呂上がりは子ども用の低刺激の保湿剤を塗って乾燥を防ぎましょう。
春夏はさっぱりとしたローションタイプ、秋冬はしっとりとしたクリームタイプを使いわけるのもよいでしょう。
衣類や寝具
化学繊維は肌の乾燥を引き起こしやすい生地があります。
アクリルやナイロンなどの化学繊維は避け、綿100%のものを選ぶと安心です。
また寝具など肌着以外のものも、肌に直接触れるものは素材に注意して選ぶとよいでしょう。
また暑い時期には、汗をかいたらこまめに着替えをすることはかゆみの予防につながります。
部屋の加湿
部屋の湿度低下は、肌の乾燥を引き起こしかゆみにつながることがあります。
部屋の広さに合った加湿器などを使用する、洗濯物を屋内に干すなどして部屋の湿度は50~60%に保つようにしましょう。
お風呂
お風呂の温度が熱すぎると、肌が乾燥しやすくなります。
夏は38℃程度、冬は39℃程度を目安に温度を設定しましょう。
また長風呂は角層内の保湿成分が流出し、肌のバリア機能低下を招きます。
長風呂は控えましょう。
また身体を洗う際は、よく泡立てた泡でやさしく洗い、ボディタオルを使う場合は綿素材のものなど柔らかいタイプを選ぶようにしましょう。
子どもの皮膚のかゆみが気になる方は上野御徒町ファラド皮膚科へ
子どもは、言葉で症状を上手く伝えられないことも少なくありません。
しばらく様子を見ていたら症状が悪化していたというケースもあります。
お子さんの気になる肌トラブルがある場合には、お気軽に当院へご相談ください。