水虫(白癬)について
水虫は医学的には白癬(はくせん)といいます。とても有名で身近な症状だと思います。足の指の間がかゆくなって、水虫かな?と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。水虫(白癬)は、白癬菌というカビ(真菌)の一種が原因です。白癬菌は皮膚に住みやすい菌なのですが、皮膚に住みだすと体の免疫が働きはじめ菌を排除しようと炎症を起こします。皮膚に炎症が起こると、皮膚に皮むけ、赤み、かゆみ、痛みなど症状を起こします。
テレビコマーシャルで放映しており市販薬も多く発売されているため、市販のお薬で治療される方もいます。ただ水虫と思っていたのが水虫でなかったり、薬の成分でかぶれてしまい皮膚がじくじくしたり、かゆくなったりしてしまうこともあります。また中途半端な治療になってしまうこともあります。水虫を疑ったら、皮膚科を受診し菌が本当にいるか確認し治療していくことをおすすめしています。
水虫(白癬)の種類
水虫というと、足の皮膚だけを想像する方も多いのですが、足の爪や、頭皮、股、手など体のいろいろなところに症状を起こすこともあります。
足水虫(足白癬)
水虫菌は、湿度が高く皮膚が柔らかい足の指の間から侵入してしまうことが多くなります。最初は、赤みやかさかさ、かゆみ程度ですが、徐々に水虫菌が広がると足裏に水ぶくれを作ってしまうこともあります。水ぶくれを作る段階では、id疹といって全身に赤いプツプツがでてしまうような強い皮膚の炎症が起こることもあります。角化型足白癬(角質増殖型足白癬)という特殊タイプでは、踵ががさがさし、足裏の皮膚が厚くなりひび割れてしまうことがあります。痛みやかゆみは少ないことも多いです。水虫の顕微鏡検査でも見つけにくく、また治療も飲み薬が必要になることがあるなど手強いタイプになります。
爪水虫(爪白癬)
水虫菌が爪に侵入してしまった状態です。爪が水虫菌で壊され、白くにごり、もろくボロボロとなり、また爪が厚くなってしまうこともあります。爪は水虫菌にとって都合のよい環境で治療が少し難しくなります。爪に浸透しやすいぬり薬や、飲み薬を使って高い濃度のお薬を爪に届けることが必要になります。爪水虫にならないよう、爪に水虫がいかない早期に足水虫を治すことが必要です。
手水虫(手白癬)
Two-feet-one-hand syndromeという言葉があります。2つの足と1つの手の症候群、これは足水虫と手水虫を表したちゃんとした医学的な病名です。手白癬は、足白癬から移ることが多く、両足水虫になってからうつってしまいます。利き手が特になりやすい訳ではないと報告されています。高齢の方や足水虫の症状が強い方、手にステロイドを塗っている方にみられることがあります。
体部白癬
“たむし”といわれるものです。足水虫が、股にうつってしまうことや背中など体のいろいろなところにでてしまうことがあります。また足水虫はT. rubrumとT. mentagrophytesという白癬菌が95%を占めますが、イヌやネコにつきやすいM. canisというカビによりできる体の白癬もあります。M. canisによる皮膚の症状は痒みや赤みが強いことが特徴です。若い方の境界くっきりした赤みではこの病気を疑い、ペットを飼っていらっしゃるかお尋ねすることがあります。
頭部白癬
“しらくも”と言われていたものです。お子さんに多く、頭の毛に水虫菌がついてしまい、境界くっきりの脱毛になってしまうことがあります。脱毛部分は、かさかさし髪の毛が短く切れています。更に進行してしまうと、Celsus禿瘡(ケルススとくそう)という頭皮の深いところに炎症が起こってしまい、赤くぶつぶつ、じくじくしてしまうことがあります。痛みが出て膿がでてしまうこともあります。
またレスリングや柔道など格闘技を行っている方は、T. tonsuransという菌の集団感染がみられています。この菌は集団での治療が必要となります。
水虫(白癬)の治療
足白癬は多くの場合、ぬり薬の治療でよくなります。1ヶ月ほど水虫のぬり薬をぬると足のがさがさが消えていきます。しかし、この時期に塗るのをやめてしまうと、まだまだ水虫菌が残っており再発してしまうので、3ヶ月は塗ることが必要になります。
塗る範囲は、足裏・指の間・アキレス腱・足裏の縁です。症状がなくてもこの場所は両足ともに塗るようにします。なぜなら症状がなくとも、逆足などにも水虫菌は必ずついているからです。
このぬり薬(抗真菌剤)にはルリコン、アスタット、ニゾラール、ラミシールなどいくつか種類がありますが、どれもよく効きます。副作用もまれにかぶれる方がいるくらいですので、安心して使ってください。万一かぶれてしまった場合には、かぶれをステロイドの塗り薬で治療してから他の系統の水虫のぬり薬に変えます。
爪水虫(爪白癬)の治療
爪水虫は、爪に入ってしまいお薬が届きにくい状態になっています。そのため、少しでも効果が高いようにお薬が工夫されています。また足の爪は生え変わるのに時間がかかりますので治療も時間がかかるものとなります。すでに水虫で変形してしまった爪は元に戻らず、伸びてきた新しい爪がきれいになっていることで治療効果をみていきます。根気よく続けていきましょう。
ぬり薬としてはクレナフィンとルコナックという爪水虫の塗り薬が保険適用で使えます。爪への浸透が高くなるように工夫されており、クレナフィンやルコナックを塗ることで爪水虫が治っていきます。完全に治るケースは、1年間続けて20-30%程度で、半分弱の方にある程度の効果がでます。いずれにしても爪水虫には6~12ヶ月ほどの長い間治療が必要になります。場合によって、白くにごった水虫の巣をニッパーなどで取り除き、よりぬり薬の効果を高めることもあります。
また効果が高いお薬として、飲み薬もあります。ラミシール、イトリゾール、ネイリンという3種類になります。ラミシールというのみ薬は毎日1錠を6ヶ月以上続けます。イトリゾールというのみ薬は1週間薬を続け、3週間は休む、という1ヶ月の周期を3回、つまり3ヶ月行います(「パルス療法」と呼ばれます)。肝臓に負担がかかることがまれにありますので、採血を定期的に行いながら治療する必要があります。比較的新しい飲み薬としては、ネイリンがあります。12週間、1日1錠を飲むお薬となり、12週間を飲み終わっても効果が継続し爪水虫を治していきます。今までの薬より副作用も少なく、効果も高いことが研究でわかっていますので爪水虫の第一選択になることも多くなります。
頭部白癬の治療
水虫菌が髪の毛の毛穴に侵入してしまい、ぬり薬が届きにくいため飲み薬で治療します。
当院の特徴
当院では水虫の状態に合わせて診断・治療を行っています。水虫か心配な方や市販の水虫薬が合わなかった方などお気軽にご相談ください。