蕁麻疹(じんましん)とは

蕁麻疹(じんましん)は、皮膚が赤く盛り上がり、かゆみが出る症状のことです。
赤い盛り上がりがどんどん増え、地図の様につながってしまうこともあります。チクチクとした痛みやひりひりとした痛みをともなうこともあります。食べ物や薬剤のアレルギーとして出るようなはっきりとした原因のある蕁麻疹(刺激誘発型蕁麻疹)や、はっきりとした原因がなく出る蕁麻疹(特発性蕁麻疹)など様々なタイプがあります。疲労や寝不足、精神的ストレス、風邪や胃腸炎などが蕁麻疹の悪化要因になります。
蕁麻疹(じんましん)の症状

蕁麻疹(じんましん)は、皮膚の一部が蚊に刺されたように突然腫れ上がり、数時間で跡形もなく消えてしまう症状です。
この盛り上がりは膨疹(ぼうしん)と医学用語では呼ばれています。かゆみやひりひり感もみられます。赤みが目立たず、まぶたやくちびるが腫れてしまうこともあります。数十分から数時間以内に消えることが多く、まれに数日持続することもあります。このように蕁麻疹はすぐに出なくなることもありますが、慢性化することもあります。4~6週間以上続いて出る蕁麻疹は慢性蕁麻疹と呼ばれます。
蕁麻疹では皮膚がむくむだけではなく、気道や腸の粘膜がむくんでしまい、呼吸困難や腹痛が出ることがあります。重症ではアナフィラキシーにつながることがあり注意が必要です。
肌で起こっていること

蕁麻疹(じんましん)は、皮膚の中の小さな血管が一時的にふくらみ、さらに血管から皮膚に水分がもれでた状態です。
血管がふくらむことで赤みがでて、肌が水分でむくむことで盛り上がります。皮膚にいるマスト細胞が顆粒(かりゅう)を放出することで、顆粒の中のヒスタミンが血管を広げ蕁麻疹を起こすことがわかっています。ヒスタミンはかゆみの神経も刺激してしまうため、蕁麻疹ではかゆみが出ます。
蕁麻疹(じんましん)の原因
蕁麻疹(じんましん)で皮膚科を受診される方の一番多いタイプは、原因がはっきりしない蕁麻疹である特発性蕁麻疹(とくはつせいじんましん)になります。
蕁麻疹全体の8割は特発性蕁麻疹となります。毎日のように夕方から夜にかけて蕁麻疹がでてしまい、食事や生活に関係なく毎日出たり引っ込んだりを繰り返している蕁麻疹は特発性蕁麻疹のことが多いです。もちろん原因がはっきりする蕁麻疹(刺激誘発型蕁麻疹:しげきゆうはつがたじんましん)もあり、食べ物や薬剤が原因のこともあります。この場合は蕁麻疹の出る少し前に原因となる食べ物を食べたり、飲み薬を飲み始めたりというエピソードがあります。お子様では卵、牛乳、大豆に対するアレルギーが多く、大人ではエビ、カニなどの甲殻類が多くなります。そのほか、小麦、ピーナッツやソバなども蕁麻疹の原因としてよくみられます。まれなタイプでは納豆アレルギーがあり、納豆を食べた半日後くらいに蕁麻疹などのアレルギー症状が出ることがあります。これは納豆の中の原因物質(ポリガンマグルタミン酸)が体の中で分解され吸収されるのに時間がかかるからとされています。お薬の副作用で出る蕁麻疹は少ないと報告されています。お子様の場合では、胃腸炎や風邪などの感染症が蕁麻疹の原因として多く見られます。
刺激誘発型(しげきゆうはつがた)の蕁麻疹 | |
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アレルギー性の蕁麻疹 | 食べ物、薬剤、植物、昆虫などが原因に。 |
食物誘発性運動誘発アナフィラキシー |
小麦やエビなどの特定の食べ物を食べた数時間後に運動することで出る。 全年齢に生じるが、10歳代の報告が多い。痛み止め(NSAIDs)でも誘発されやすい。 |
非アレルギー性の蕁麻疹 | サバやたけのこ、造影剤などで起こる。 |
物理性蕁麻疹 |
圧迫や摩擦、寒冷刺激、日光、温熱、水などで起こる。 それぞれ、遅延性圧蕁麻疹、機械性蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、日光蕁麻疹、温熱蕁麻疹、水蕁麻疹と呼ばれます。 |
コリン性蕁麻疹 | 入浴や運動、精神的緊張で汗をかいたときに出る。一つ一つの膨疹が1~4mmと小さく、小児から若い成人に多い。 |
接触蕁麻疹 | 皮膚が特定のものと接触することで接触部位に出る。 |
蕁麻疹は、数日ですぐにおさまってしまう「急性蕁麻疹」と、4~6週間以上続き、場合によっては年単位で症状が出たり消えたりする「慢性蕁麻疹」に大きくわけられます。慢性蕁麻疹は多くの場合、原因がはっきり特定できません。
食べ物など特定の原因を疑った場合にはMast 36、View 39といったアレルギー検査や、総IgEや好酸球といったアレルギー関連の項目を含めて採血を行うことがあります。難治の場合は抗甲状腺抗体やCRPを測定することも推奨されています。当院でこれら検査が可能ですのでお気軽にご相談ください。
蕁麻疹(じんましん)で日常注意すること
蕁麻疹(じんましん)では、以下が悪化要因となります。
- 生活上のストレス、疲労
- 睡眠不足
- 不規則な生活
- 入浴やシャワー
- 運動
- 飲酒
- 感染症(風邪や胃腸炎など)
- 痛み止めの飲み薬(ロキソニンなど)
- 衣服などの摩擦、圧迫
日々の生活でこれらに注意していくことが大切です。
蕁麻疹(じんましん)の治療

蕁麻疹(じんましん)は原因や悪化要因を特定し、それらを避けながら飲み薬で治療していきます。
第一の目標として、治療によって症状の出ない生活を目指し、最終的には治療を行うことなく症状がでない状態を目指していきます。
蕁麻疹はヒスタミンという物質によって皮膚にむくみや赤みがでます。このヒスタミンを抑えるお薬が「抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)」です。花粉症やアレルギー性鼻炎の治療でもよく飲まれるお薬になります。アレグラやアレジオン、クラリチンなど一部は市販もされています。抗ヒスタミン薬はたくさんの種類があり、眠気が少ないもの、パイロットの方でも飲めるもの、小さなお子さんでも飲めるもの、1日1回のもの・2回のもの、食事と関係なく飲めるものなどたくさんの違いがあります。ただ一般的には眠気が少ないお薬であっても眠気がでてしまう方がいらっしゃいます。また一部の抗ヒスタミン薬は、効果が不十分な場合に一度に飲む量を増やして対応できるものもあります。当院ではこれら違いを理解し、ひとりひとりにあったお薬を提案いたしますのでご安心ください。薬が合わないときは変更し調節致します。
抗ヒスタミン薬を増量しても効果が不十分の場合は、H2拮抗薬(ガスターやプロテカジンなど)や抗ロイコトリエン薬(シングレア・キプレス)、トラネキサム酸内服薬、漢方薬を追加することもあります。短期間のみステロイドの飲み薬(プレドニンなど)を処方することもあります。
お薬を飲み始めてすぐに蕁麻疹が消えても少し長めに飲んで止めたほうがよいこともあります。少し長めに飲むことによってその後に蕁麻疹がでにくくなることがわかっており、インバースアゴニスト効果と呼ばれます。お薬を飲み始めてすぐに蕁麻疹が消えても、最短1週間は飲み続けることをおすすめしています。蕁麻疹が長い間出てしまい慢性化してしまった患者様は、いつまで蕁麻疹が出るのか不安になってしまう方もいます。一人ひとり経過は様々で、抗ヒスタミン薬を数ヶ月間飲んで落ち着かせた後は飲み薬を止めても症状が出ない方もいれば、年単位で飲んでも止めると症状が出てしまう方もいらっしゃり、人によって様々です。抗ヒスタミン薬の飲み薬の補助にレスタミンクリームやステロイドクリーム(アンテベートクリームなど)などのぬり薬を使うこともあります。
飲み薬でも症状が落ち着かない蕁麻疹の方は、ゾレア(オマリズマブ)という注射のお薬もあります。IgEというアレルギーなどに関係するタンパク質を抑えるお薬になります。ご希望の方は、提携病院にご紹介いたします。
まとめ
蕁麻疹はかゆみもつらく、突然症状が出るため不安になってしまう方も多い症状です。
抗ヒスタミン薬などの飲み薬で症状がすぐに治まることも多く、お薬も調節可能です。蕁麻疹にお困りの方はお気軽にご相談ください。