酒さ(赤ら顔)とは

「ちょっとした刺激で顔がすぐ赤くなる」、「鼻の頭が赤い」、「お風呂や緊張するとすぐに顔が赤くなる」などでお悩みの方は多いと思います。赤ら顔・酒さは、なんらかの原因により顔が赤くなっている状態のことです。ニキビのような赤いぼつぼつが同時に出ることもあります。赤みは鼻、ほほなどで目立ち、血管が開いてちりちりした赤い線(毛細血管拡張と呼びます)が出てしまうこともあります。ほてり感やチクチクした刺激感が特徴です。気温の変化や飲酒、緊張でより悪くなります。
ニキビに似ていますが、治療が違いますのでニキビとは分けて考えることが必要です。ただニキビが一緒にでることもあるので見分けて治療していきます。
酒さ(赤ら顔)の種類
酒さには大きく分けて4つのタイプに分けられます。また、複数のタイプの症状が同時にみられることもあります。
紅斑(こうはん)毛細血管拡張型(第I度 紅斑性酒さ)

顔が一時的に赤くなったり、持続的に赤みがでたり、毛細血管の拡張が目立つ状態です。
丘疹・膿疱(きゅうしん・のうほう)型(第II度 酒さ性痤瘡)

赤いぷつぷつとした盛り上がり(丘疹:きゅうしん)がみられ、また膿を持ったぶつぶつ(膿疱:のうほう)もみられます。
腫瘤(しゅりゅう)型(第III度 鼻瘤(びりゅう))
鼻によく見られる、皮膚が厚くなり皮膚がボコボコと凹凸が目立つ状態になります。このタイプは男性によくみられます。
目型
涙目のような目の充血、異物感、熱感、痒み、乾燥、眩しい感じなどが症状としてみられます。
このようにいくつかのタイプにわかれますが、「赤いぽつぽつ」と「ぼわっとした赤み」の2つの症状が酒さを診断する際のポイントとなります。
酒さ(赤ら顔)の原因
酒さの原因はまだはっきりわかっていませんが、酒さになりやすい肌質(遺伝的な体質)や、皮膚表面の免疫不調、血管を開いたり閉じたりする神経が敏感になっていること、顔の表面の毛包虫(顔ダニ・デモデックスDemodex)というニキビダニ、女性ホルモンの影響などが原因として考えられています。またカルシウム拮抗薬という血管を拡張する作用のある高血圧薬も赤ら顔の原因になっていることがあります。
また顔の湿疹やアトピー性皮膚炎でステロイドやプロトピック軟膏をぬっていて、赤ら顔になってしまう方もいます。こちらはステロイド酒さ・酒さ様皮膚炎といい、酒さと似ていますが少し違う症状になります。治療は酒さとほぼ同じになります。
酒さ(赤ら顔)の悪化要因
酒さは、血管が開くような刺激で症状が悪くなるため、暖房で寒暖差が大きい冬に悪化する方が多くなります。赤みが強くなり、ほてったように感じます。また紫外線は酒さにとても悪く、紫外線が強くなってきた6月くらいに赤みが悪くなる方もいらっしゃいます。
また酒さの方は、スギやヒノキ花粉症を持っている方が75%ととても多く、花粉症の時期も肌がかゆく、赤くなり悪化することがあります。
他には、入浴後、運動後、食後、辛いものを食べる、飲酒後、など血行がよくなる行動をしたあとに赤みが増すことが多くなります。
このような症状でほてり感や赤みが強くなる方は、酒さの可能性がありますのでお気軽にご相談ください。
酒さ(赤ら顔)とニキビ(尋常性ざ瘡)との違い

ニキビでは、コメドといわれる毛穴づまりのような白ニキビや黒ニキビが混ざっていることが特徴で、酒さではコメドはみられません。また酒さではほてり感がありますが、ニキビではほてり感やヒリヒリ感はありません。ニキビのぽつぽつは毛穴の場所にできますが、酒さのぽつぽつは必ずしも毛穴の場所にはできないことも見分けるポイントです。
酒さにニキビが混ざっていることもあります。
酒さ(赤ら顔)のケアで大切なポイント
酒さの治療では、まず生活習慣の改善、スキンケアの改善を行います。生活習慣や食べ物、スキンケア用品など自分自身で生活の中での悪化要因を見つけて、できるだけ避けることが大切です。
生活習慣
- 辛い食べ物や熱い食べ物・飲み物は避けましょう。コーヒーや紅茶もホットよりアイスがおすすめです。
- 精神的ストレスも酒さ悪化の原因となるので、ストレスはためないようにしましょう。
- 冷たい風や冷房、暖房など低温や高温に注意しましょう。
- 花粉の季節では、花粉が肌につかないように注意し、また空気清浄機を使って花粉対策をしましょう。
スキンケア
酒さではスキンケアがとても大切です。間違ったスキンケアで酒さを悪くしてしまうこともあります。酒さの肌では皮膚のバリア成分であるセラミドが不足しており、肌バリアが弱くなっていることが報告されています。肌バリアが弱く、皮脂が多い方も乾燥しやすくなってしまい保湿が大切です。
洗顔は刺激にならないよう強く擦らない、洗顔後はタオルを当てるようにして水分を拭き取るようにするなどの注意が必要です。
紫外線は皮膚にダメージを与え、炎症を起こし酒さを悪化させます。日焼け止めをしっかり塗りましょう。一般的に日焼け止めは紫外線散乱剤のみで紫外線吸収剤が入っていないノンケミカルの製品がおすすめです。ノンケミカルの日焼け止めは白浮きしやすくはなるので注意が必要です。SPFは30で十分で、SPFが高いものを選ぶより頻繁に塗り直すことで効果を高めることが大切です。
酒さに効果が期待できるスキンケア成分は、アゼライン酸、アゼライン酸誘導体、トラネキサム酸、ナイアシンアミドがあります。スキンケア製品を選ぶ時の目安にしてください。
保湿剤は、皮膚の保護効果もあるため使用をおすすめしています。また酒さのぬり薬の刺激を少なくするためにも併用をおすすめしています。
酒さはなりやすい体質が根底にありますので、症状がよくなった後もちょっとしたきっかけで悪化してしまうことがあります。日常生活から注意して、悪化を予防し、悪化してもうまく対応できるようにケアと治療をしていくことが大切です。
酒さ(赤ら顔)の治療
酒さ(赤ら顔)治療のポイントは、赤みの原因となっている肌炎症をしっかり抑えることと、赤みの原因となっている血管をレーザーで治療することの2つです。当院では様々な治療を併用して赤ら顔を治療しています。
塗り薬
メトロニダゾール(ロゼックスゲル)

酒さに唯一保険適用のお薬になります。メトロニダゾールという抗菌剤の塗り薬で、肌の炎症を抑える効果があり、酒さのポツポツや赤みを抑えます。1日2回患部に塗るお薬で、保険では15gチューブ1本が460円程度(3割負担の場合)になります。
イベルメクチンクリーム

イベルメクチンクリームは一番効果が高い酒さの塗り薬になります。ロゼックスゲルと比較した研究もありイベルメクチンクリームの方が、効果が高いことがわかっています。イベルメクチンクリームの方が、刺激が少ない方も多く、使いやすいためしっかり治療したい方はイベルメクチンクリームから開始します。またイベルメクチンクリームは肌の炎症を抑える効果だけでなく、唯一ニキビダニを直接殺菌できる塗り薬です。ぽつぽつが強い場合に、皮膚をこすって直接鏡検という顕微鏡検査を行いニキビダニがいるか判断し、ニキビダニがいる場合は、イベルメクチンクリームを使います。イベルメクチンクリームは患部に夜1回塗る薬になります。多くの方は使用開始して4週間ほどで効果を実感できます。
アゼライン酸(AZAクリアなど)

アゼライン酸は殺菌効果、抗炎症効果、抗酸化作用があり酒さ治療で海外でもよく使われています。天然穀物由来の成分で妊娠中も使えるお薬です。使い始めの1週間ほどにピリピリと刺激を感じてしまう方がいらっしゃいますが慣れていきますのでご安心ください。
飲み薬
大きく分けて抗菌薬とイソトレチノイン、漢方薬があります。抗菌薬の飲み薬としては、ビブラマイシン(ドキシサイクリン)、ミノマイシン(ミノサイクリン)、ルリッド(ロキシスロマイシン)があります。これらの抗菌薬は殺菌効果のみでなく、抗炎症効果がありぷつぷつや赤みの原因となっている炎症を抑えることができます。ビブラマイシンはたまに胃にムカムカ感が出る方がいらっしゃいますが副作用は少なく使いやすいお薬となります。
塗り薬やこれら抗菌薬の飲み薬で効果が少ない時に、重症ニキビ薬としても知られるイソトレチノインの内服が有効です。 海外ではイソトレチノインはアキュテイン、ロアキュタン、イソトロイン、アクネトレントなどの商品名でも知られています。 イソトレチノインは皮脂を抑える強力な効果や抗炎症効果があり、ぽつぽつやぼわっとした赤みを抑えることができます。採血で肝機能や中性脂肪などのチェックが必要で、妊娠する可能性のある方、妊娠中の方は服用できません。服用期間中に加えて、内服後1か月は妊娠しないように注意してください。
イソトレチノインについてはこちらもご参照ください。
顔のほてり感には漢方薬を処方することもあります。桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)を当院では症状に合わせて処方しています。
レーザー治療など機械治療
ぼわっとした赤みは、皮膚の浅いところに血管が増えていますので、血管をターゲットにしたVビームレーザーとポテンツァが主に使われます。
Vビーム

Vビームは、595nmという血管による反応するレーザー光が出せるレーザーで、血管に反応させ血管を破壊し赤みを改善していきます。5~10回の治療をおすすめしています。レーザー後は軽いむくみや内出血がでることがありますが、強さを調節することでこちらも抑えることができます。
Vビームレーザーについてと、当院での症例はこちらをご参照ください。
ポテンツァ
ポテンツァはマイクロニードルを肌に刺し、皮膚に極小の穴を開けて、針先から高周波(RF・ラジオ波)を照射します。血管新生という、皮膚の炎症で血管が増えるのを抑える効果があり、酒さの血管が増えるのを抑え赤みを改善します。またポテンツァは酒さの炎症を抑える効果や肌のヒリヒリ感を改善できることが論文でもわかっています。当院では、Vビームとポテンツァが両方あり、その両方の特徴の違いを活かしながら、患者様の状態に合った治療を行っています。 ポテンツァについてと、当院での症例はこちらをご参照ください。
IPL・光治療(フォトシルク ルクセア)
血管に反応する光によって肌の赤みを改善させる治療になります。痛みが少ないことや、シミ治療や肌質改善も同時に行うことが可能です。酒さの赤みや血管拡張にはVビームの方が、細かく設定できるため効果が高くおすすめですが、シミや肌質も気になる方には光治療も選択肢の1つになります。
マイクロボトックス(スキンボトックス)
マイクロボトックスは酒さや赤ら顔の治療で海外でも昔からよく行われている治療になります。ボトックスは眉間などのシワに注射するイメージがありますが、マイクロボトックス(スキンボトックス)といって肌表面に少量ずつ細かく注射することで肌の赤みを減らすことができます。酒さでは、神経が過敏になっており、神経が血管を刺激しているためこの過敏な神経をボトックスが抑え赤みを抑えることができると考えられています。皮脂や毛穴への効果も期待でき、赤みにも即効性を感じやすい治療になります。3~4ヶ月ごとに受けて頂けますと効果が継続します。自費治療になり、両頬 27,500円(税込)となります。
当院での治療症例
症例1 【40歳代女性】酒さ・赤ら顔

いろいろな皮膚科を受診され、ロゼックスゲルやアゼライン酸、ミノマイシン内服をされるも改善なく、当院を受診されました。当院で、肌の状態を分析し、炎症と毛細血管拡張が両方強いと判断しイベルメクチンクリームの塗り薬とVビームレーザー治療4回とポテンツァ 赤ら顔(全顔)を1回行いました。赤みがかなり改善しています。
費用 | イベルメクチンクリーム 30g 4,400円(税込) Vビームレーザー全顔 32,780円(自費の場合・税込) ポテンツァ 赤ら顔 全顔55,000円(税込) (本症例では、総額190,520円(税込)) |
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副作用・リスク | 腫れ・内出血・痛みなど |
症例2 【30歳代女性】酒さ・赤ら顔(5回実施)

何件か皮膚科を受診されましたが症状が改善せず、当院を受診されました。イベルメクチンクリームを併用しながら、Vビーム照射を5回行い頬の赤みやポツポツが改善しました。
施術 | Vビームレーザー治療5回 | |
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費用 | Vビームレーザー両頬 21,780円(税込) イベルメクチンクリーム 30g 4,400円(税込) (本施術では総額113,300円(税込)) |
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副作用・リスク | 腫れ・内出血など |
症例3 【50歳代男性】酒さ・赤ら顔

両頬に赤みやポツポツが出現し当院を受診されました。この方も当院で、肌の状態を分析し、炎症と毛細血管拡張が両方強いと判断しイベルメクチンクリームの塗り薬、ビブラマイシン内服とVビームレーザー治療3回を行いました。まだ少し赤みは残っていますがかなり赤みとポツポツが改善しています。
費用 | イベルメクチンクリーム 30g 4,400円(税込) Vビームレーザー両頬 21,780円(自費の場合・税込) (本症例では、総額69,740円(税込)) |
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副作用・リスク | 腫れ・内出血など |
症例4 【40歳代女性】酒さ・赤ら顔

両頬に赤みやポツポツが出現し、多数の皮膚科で治療するもなかなか良くならず当院を受診されました。肌の状態を分析し、炎症が強いタイプでしたのでまずはイベルメクチンクリームの塗り薬、ビブラマイシン内服から開始し、さらにVビームレーザー治療5回行いました。まだ少し赤みは残っていますがかなり赤みとポツポツが改善しています。
費用 | イベルメクチンクリーム 30g 4,400円(税込) Vビームレーザー両頬 21,780円(自費の場合・税込) (本症例では、総額113,300円(税込)) |
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副作用・リスク | 腫れ・内出血など |
症例5 【60歳代女性】酒さ・赤ら顔

両頬に赤みが出現し、当院を受診されました。肌の状態を分析し、炎症が強いタイプでしたのでまずはイベルメクチンクリームの塗り薬、ビブラマイシン内服から開始し、さらにVビームレーザー治療5回行いました。Vビーム治療では、1.5msと10msのパルス幅を使い分け副作用を少なく、効果を高く治療しました。
費用 | イベルメクチンクリーム 30g 4,400円(税込) Vビームレーザー両頬 21,780円(自費の場合・税込) (本症例では、総額113,300円(税込)) |
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副作用・リスク | 腫れ・内出血など |
今まで治療してもよくならなかった方へ
当院では、酒さ・赤ら顔患者様がたくさん受診されています。その中には他院でいろいろな治療をしても良くならずいらっしゃる方も多い印象です。確かに酒さ・赤ら顔は皮膚科医にとっても難しい病気ではあります。それは診断と治療がともに難しいからです。当院では酒さ・赤ら顔の治療に力を入れているため経験も豊富で治療経験も多くなります。また私は東大病院皮膚科勤務時代にも治療が難しく紹介になった酒さ・赤ら顔の患者様を多数治療しておりました。
当院を受診される方の中にはVビームレーザーを何度もやったのに効果がなかった方や塗り薬や飲み薬を使ってもよくならなかった方もいらっしゃいます。酒さ・赤ら顔の治療は、起こっている炎症とそれに伴う毛細血管拡張を見抜き治療することが大切です。炎症が強い状態でVビームレーザー治療を行っても効果は低く、酒さの状態を見極めて治療することが大切です。当院では、酒さ・赤ら顔での治療の選択肢がたくさんあり、患者様の状態に合わせてご提案しています。
よくある質問
赤ら顔(酒さ)は完治しますか?
赤ら顔(酒さ)は、日常生活の改善や塗り薬や飲み薬でうまくコントロールしていくことが大切です。紫外線に強くあたってしまうと赤みがでることもありますので日頃から紫外線等に注意も必要です。
日常生活で注意することはありますか?
紫外線や花粉、室内外の温度差、レチノールやAHAなど刺激のあるコスメ、ストレスを避けることが大切です。
避けた方がいい食べ物・飲み物はありますか?
アルコール
辛い食べ物(カプサイシン)
シンナムアルデヒドが含まれる可能性のあるトマト
ヒスタミンが含まれる可能性のある熟成チーズ、赤ワイン、加工肉
は、注意が必要です。
湿疹と赤ら顔(酒さ)の違いは何ですか?
湿疹は肌表面の表皮にメインの症状があり、かさかさや赤みが出ます。赤ら顔(酒さ)では肌の奥(真皮)にメインの症状があり、肌のむくみや深い赤み、毛細血管の拡張がみられます。
まとめ
酒さ、赤ら顔治療のご相談は上野御徒町ファラド皮膚科へ
酒さ、赤ら顔は診断することも、治療することも難しい病気になります。当院では、酒さ・赤ら顔治療に力を入れております。脂漏性皮膚炎やかぶれ、湿疹、ニキビなど他の病気としっかり見分け、その方の症状にあった治療を行っていきます。赤ら顔や酒さでお悩みの方は是非ご相談ください。