皮膚がんについて
いろいろな臓器に「癌(がん)」はできますが、皮膚も例外ではありません。
有棘細胞癌や基底細胞癌といった癌は稀ではなく、高齢社会ということもあり年々増えていることがわかっています。
若い方も例外ではなく、ホクロを取りたいと受診された方で、実は皮膚がん(基底細胞癌など)であったことを何度も私は経験しています。
30歳代の方でも決して稀ではありません。
またこれら皮膚の癌は、紫外線が原因のことも多く、日頃の紫外線ケアが大切です。
当院の院長は、皮膚がん(皮膚悪性腫瘍)の診療や研究が認められ、第7回日本皮膚悪性腫瘍学会賞(石原・池田賞)を受賞しております。
大学病院や近隣総合病院とも連携し、当院でも皮膚がんの診断と治療を行っています。
皮膚がんの種類
日光(光線)角化症、ボーエン病、有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)
有棘細胞癌は、皮膚の浅いところから発生する癌になります。
紫外線が発症に関係しているため、顔や耳、髪の少ない頭皮などの日光が当たりやすい場所にできやすい特徴があります。
有棘細胞癌は、日光(光線)角化症、ボーエン病という状態から進行して発症することが多いため、日光(光線)角化症とボーエン病を前癌病変と呼んでいます。
日光(光線)角化症)
赤くかさかさしたもので、一見すると湿疹やイボに見えることがあります。
ボーエン病(Bowen病)
こちらも赤く、少し厚めのかさぶたがついていることが多く、湿疹と間違われることがあります。
いびつな形ですが、周りとの境界がくっきりしていることが多いものです。
有棘細胞癌(SCC: squamous cell carcinoma)
硬く盛り上がったできもののことが多いですが、じくじくした潰瘍であることもあります。
有棘細胞癌になっている場合は、リンパ節への転移も考えないといけないため、大学病院等に紹介致します。
基底細胞癌(きていさいぼうがん、BCC:basal cell carcinoma)
基底細胞癌は若い方にも珍しくない癌になります。特に白人の方はできやすいものになります。
顔にできやすく、紫外線が発症に関係していることがわかっています。
ホクロのように黒く盛り上がっているものや、平らで黒いもの、じくじくしているものもあります。
アグレッシブタイプと非アグレッシブタイプに分かれますので、タイプに応じた治療が大切になります。
悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ、メラノーマ melanoma)
いわゆるホクロの癌です。日本人の場合は、手の平、足の裏にできることが多いですが、全身の皮膚と粘膜どこにでもできます。
最初の見た目はホクロに近いことも多く、進行すると黒い盛り上がりになることや、じくじくした潰瘍になっていきます。
手の平、足の裏のホクロは念のため、皮膚科で診断してもらうのがいいと思います。
ホクロとの見分け方は、「ABCDEルール」というものがあります。
A(Asymmetry):左右対称でない、B(Border):境界がギザギザしていたり不明瞭だったりする、C(Color):色ムラがある、D(Diameter):直径6mm以上と大きい、E(Evolution):大きさ・色・形が変化していく、に当てはまるものは悪性黒色腫の可能性がありますので皮膚科で診てもらうことが必要です。
隆起性皮膚線維肉腫(りゅうきせいひふせんいにくしゅ、DFSP: dermatofibrosarcoma protuberans)
赤から茶色のできもので、皮膚の奥にゴムのような硬いしこりとしてできることが多いできものです。
ゆっくりと大きくなっていくことが多く、痛みはあまりありません。
大きくなるのはゆっくりですが、皮膚の深いところにどんどん広がることがあるので注意が必要です。
皮膚リンパ腫
皮膚リンパ腫は他の皮膚癌とは違う特徴があります。
一番多いのは、菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)になり、血液や肌にいるT細胞リンパ球が悪性となり発症します。
最初は、湿疹のようなかさかさした赤みがでて、徐々に厚みを持ってきます。
一部の方は、腫瘤といって盛り上がりが強くなることもあります。
また全身が真っ赤になっていく紅皮症というタイプを取ることもあります。
湿疹や皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬にとても似ることがありますので注意が必要です。
皮膚がんの診断
皮膚癌の診断は、まずは皮膚専用の拡大鏡であるダーモスコピーで確認し、場合によって皮膚生検でできものを一部または全部取り、病理検査に出して診断します。
ダーモスコピー
ただの拡大鏡ではなく、皮膚での光の反射を防いで皮膚の奥の構造までも観察し診断します。
基底細胞癌や悪性黒色腫など特徴的な所見がありますので、見た目やいつからできたかなどの情報と総合し診断していきます。
皮膚生検・病理検査
悪性を疑った場合に、病変を一部または全部取り病理検査に出します。
一部を取る場合は、皮膚をくり抜くパンチやメスを使って一部を取り、糸で縫合します。
疑う癌やタイプによっては生検せずに大学病院に紹介することもあります。
皮膚癌の治療
皮膚癌のタイプや大きさによっては、当院で切除を行うこともあります。
特に結節型などの基底細胞癌や、日光角化症・ボーエン病を手術します。
有棘細胞癌や悪性黒色腫を疑う場合は、様々な検査が必要なため大学病院へ紹介しています。
日光角化症は、浅いところに限られている癌の状態ですので、塗り薬ベセルナクリーム(イミキモドクリーム)を使うことや、液体窒素治療で治療することもあります。
まとめ
皮膚癌の患者さんは年々増えており、若い方も例外ではありません。
ホクロと思って受診された患者さんが皮膚癌であったことを何度も経験しています。
原因として多い紫外線を日々対策し、気になるできものがありましたらお気軽に当院にご相談ください。
【参考文献】
皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 有棘細胞癌診療ガイドライン2020 日皮会誌:130(12),2501-2533,2020
皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第 3 版 基底細胞癌診療ガイドライン 2021 日皮会誌:131(6),1467-1496,2021
皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 メラノーマ診療ガイドライン2019 日皮会誌:129(9),1759-1843,2019
Kamijo H, Miyagaki T. Mycosis Fungoides and Sézary Syndrome: Updates and Review of Current Therapy. Curr Treat Options Oncol. 2021;22:10.