サブシジョンが効くニキビ跡・効きにくいニキビ跡の見分け方｜皮膚科専門医が徹底解説

はじめに：サブシジョンはどんなニキビ跡に効果がある？

「サブシジョンは本当に自分のニキビ跡に効くのか？」

これは当院にご相談いただく患者様から最も多く寄せられる質問のひとつです。

サブシジョン（Subcision）は、皮膚の下で瘢痕（はんこん）組織を物理的に切り離すことで、へこんだニキビ跡を持ち上げる治療法です。長い歴史があり、現在も海外・日本ともに多くの医療機関で行われています。しかし、「どんなニキビ跡にも万能」というわけではありません。
サブシジョンが効きやすいニキビ跡と、効きにくいニキビ跡が明確に分かれるのが特徴です。

本記事では、

• サブシジョンが向いているニキビ跡のタイプは？
• どんなニキビ跡だとサブシジョンは効きにくい？
• 見分け方のポイントは？
• 代替・併用すべき治療は？

といった疑問に、皮膚科専門医の立場から詳しくお答えします。

ニキビ跡の種類と特徴｜まずは正確な分類から

ニキビ跡は大きく3タイプに分類されます（PMID: 11423843）。

治療方針を決める際、この分類は非常に重要です。

①図1 ローリング型（Rolling scar）｜波打つような凹凸。サブシジョン適応◎

特徴

• ゆるやかな“波”のように見える凹凸
• 境界がぼんやり
• 皮膚の下に癒着（線維性のひきつれ）が存在
• U型の底、直径4mm以上の比較的大きめのへこみ

原因

真皮〜皮下にかけて瘢痕が形成され、皮膚が内部から引き込まれることでへこみが生じます。

患者様の声

「肌が波打って見える」「光の当たり方で影が出てへこんで見える」「深いへこみがある」

②図2 ボックスカー型（Boxcar scar）｜はっきりした縁の四角いへこみ

特徴

• 四角い穴のようなへこみ
• 縁がくっきりしたへこみ
• 浅いものから深いものまで幅広い
• 真皮浅層〜深層の深さレベルに存在

原因

炎症で皮膚組織が欠損し、一定の範囲が深く陥没した状態。真皮の広い範囲で瘢痕に肌が入れ替わっている。

患者様の声

「メイクで隠せない」「ファンデーションがたまる」「特定の角度で穴のように見える」。

③図3 アイスピック型（Icepick scar）｜細く深い“針穴タイプ”

特徴

• 先が細いV字型
• 直径2mm以下の非常に細いへこみ
• 毛穴が大きく見えるように感じることも
• 真皮浅層〜深層まで深く落ち込んでいる

原因

ニキビの炎症が深くまで及び、皮膚組織が柱状に破壊された結果。

患者様の声

「小さな穴が肌にある」「鼻の毛穴が目立つ」。「小さな深いへこみがある」。

サブシジョンの適応と効果の見分け方

ローリング型 → 適応◎（最も効果が出やすいタイプ）

• 理由: へこみの原因となっている癒着を針で剥がすことで、皮膚が上に持ち上がり、へこみが改善しやすい。
• 診察ポイント: 指で皮膚を横に引っ張ってもへこみが残る場合は皮膚の下に癒着が存在する。肌が凹凸で波打っている、光の当たり方で影が強調される場合はサブシジョンが有効。
• 効果の実感: 少ない回数の治療でへこみの改善を実感する方も多く、3回の施術で大きく変化が出ることがある。

深いボックスカー型 → 適応◯（一部で有効）

• 理由: 皮膚や瘢痕の硬さが強くない場合はサブシジョンの効果が期待できる。瘢痕の底が広く硬い場合、皮下の単純な剥離だけでは持ち上がりに限界がある。
• 診察ポイント: 皮膚や瘢痕の硬さやニキビ跡の場所が大切。頬の外側やこめかみにある、皮膚や瘢痕が硬くないニキビ跡ではサブシジョンの効果が期待できる。へこみの縁が硬く、深いものはサブシジョンで部分的に改善するが、他治療の併用が必要。
• 補足: トライフィルプロやポテンツァ、ブレッシング、TCAクロスと組み合わせることで改善率が高まる。

アイスピック型 → 適応△（単独では効果が限定的）

• 理由: へこみが細く深いため、剥離するスペース自体がほとんど存在しない。浅くする効果は少ないが、サブシジョンを行うことでその後の他治療の効果を高めることができる。またサブシジョンとヒアルロン酸注入を併用することで効果が出る可能性あり。
• 診察ポイント: 深く小さいへこみ、細長い穴は、サブシジョンでは効果は限定的。他治療と併用することが基本。
• 推奨治療: TCAクロス、パンチ切除、トライフィルプロが適応。

医師がカウンセリングで見ているポイント

1.へこみの場所

頬の外側はサブシジョンが効きやすく、頬内側や口周りはサブシジョンの治療回数が多く必要。

2.硬さと柔らかさ

柔らかい場合は持ち上がりやすい。硬い場合は他治療併用が必要。肌が柔らかすぎる場合やたるみが強い場合は、ボルニューマや糸リフトなどのたるみ治療の併用もおすすめ。

3.指で引っ張るとへこみが下に引き込まれたままか

引っ張った時にへこみが残る場合は、線維の癒着がありサブシジョンの適応。

4.瘢痕の深さと広がり

広範囲に浅いローリング型はサブシジョン単独で有効。狭く深いボックスカー・アイスピックはサブシジョンだけでなく、追加治療を検討。サブシジョンは他治療の効果を高めるための補助と考える。

サブシジョンの限界と効きにくいケース

かなり硬い(瘢痕が非常に硬い)ニキビ跡　

皮下の癒着が取り除けても平坦になりにくい。

点在しているボックスカー型のニキビ跡

他治療との併用が必要。ボックスカー型が集まっている場合はサブシジョンが効きやすい。

アイスピック型が混ざっている場合

サブシジョンだけでは効果が出にくい。

肌のたるみが強いニキビ跡

剥離しても持ち上がらないことがある。糸リフトやボルニューマなどのたるみ・引き締め治療が必要。

このような場合、サブシジョンは補助的治療として位置づけ、他の方法を組み合わせます。ただし、サブシジョンを先に行うことで、その後に行う治療の効果が現れやすくなる傾向があります。

サブシジョンと相性の良い併用治療

1. トライフィルプロ（炭酸ガス剥離療法）

※詳細はトライフィルプロのページをご覧ください

• サブシジョンと同じく「癒着剥離」を目的とする施術。
• ガスと細い針を使うためよりダウンタイムが少なく、より繊細に皮膚の浅いところから深いところまでピントで剥離ができる。
• ローリング型、ボックスカー型、アイスピック型に有効。

2. ポテンツァ・ブレッシング（ニードルRF治療）

※詳細はポテンツァのページまたはブレッシングのページをご覧ください

• 細かい針刺激と高周波の熱刺激でコラーゲン産生や皮膚の再構成を行う。
• サブシジョン後の細かい凹凸や肌質改善、毛穴に有効。

3. TCAクロス法

※詳細はTCAクロスのページをご覧ください

• 濃度の濃いピーリング剤(トリクロロ酢酸)を使用しニキビ跡を刺激し再生させる。
• アイスピック型や小さなボックスカー型に有効。
• サブシジョンと併用することで混合型ニキビ跡を総合的に改善できる（PMID: 24616873）。

4. ニキビ跡切除・パンチ切除

• 深く、3mm以下程度の小さいニキビ跡を切除し縫合する。
• 深いアイスピック型におすすめ。

サブシジョンと他治療の違い（まとめ表）

当院の症例

症例1 【40歳代男性】頬のニキビ跡（サブシジョン2回実施）

右頬のローリング型ニキビ跡に対してサブシジョンを2回行った方です。サブシジョンによってへこみが目立たなくなっています。

【費用】サブシジョン（2x2cm） 22,000円（税込）サブシジョンにヒアルロン酸追加（2x2cmあたり）22,000円（税込）
（本施術では総額132,000円（税込）
【副作用・リスク】内出血、腫れなど

症例2 【30代女性】左頬のニキビ跡（サブシジョン1回実施）

左頬のニキビ跡をお悩みで受診されました。ローリング型やボックス型が混ざったニキビ跡にサブシジョンを１回行いました。

【費用】サブシジョン（2x2cm） 22,000円（税込）、サブシジョンにヒアルロン酸追加（2x2cmあたり）22,000円（税込）
（本施術では総額44,000円（税込）
【副作用・リスク】内出血、腫れなど

料金

よくある質問（Q&A）

Q1. サブシジョンは1回で効果がありますか？

A. 個人差はありますが、多くの場合は数回の施術が必要です。ローリング型であれば1回目から変化を感じやすい傾向があります。

Q2. サブシジョンのリスクはありますか？

A.内出血やむくみ、腫れ、違和感が出ることがあります。

Q3. サブシジョンのダウンタイムはどれくらいですか？

A.数日むくみや腫れが起こることがあります。内出血が1〜2週間続くことがありますが、メイクでカバー可能です。メイクや洗顔は当日から可能です。

Q4. サブシジョンだけで完全に治りますか？

A.ローリングタイプの場合はサブシジョン単独でよくなることもありますが、深いニキビ跡や硬いニキビ跡は他の治療との併用がおすすめです。

Q5. サブシジョンとトライフィルプロの違いは？

A.ともに瘢痕組織の剥離を行う治療ですが、サブシジョンは特に真皮下層～脂肪層の治療に強く、トライフィルプロは真皮全体の治療に強い特徴があります。深いニキビ跡では併用がおすすめです。

まとめ｜サブシジョンが向いているニキビ跡・向かないニキビ跡

サブシジョンは、「癒着によるへこみ」を改善する治療であり、特にローリング型のニキビ跡に効果的です。一方で、アイスピック型では効果が限定的で、他の治療との併用が必要です。

サブシジョンが効きやすいニキビ跡

• ローリング型（最も高い適応）
• ボックスカー型（特に頬外側やこめかみのボックスカー型が集まったタイプ）

サブシジョンが効きにくいニキビ跡(回数が必要であるか他の治療の併用が必要)

• アイスピック型
• 非常に硬い瘢痕のニキビ跡
• たるみが強い場合

自分のニキビ跡がどのタイプに当てはまるかを正確に見極めることが、治療成功の第一歩です。

「どの治療が向いているのか知りたい」
「サブシジョンが自分に必要なのか相談したい」

という方は、まず一度カウンセリングをご検討ください。
肌の状態を細かく診察し、最適な治療プランをご提案いたします。

当院のサブシジョンについてはサブシジョンのページもご参照ください。

＜参考資料・文献＞

• 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023（PDFファイルが開きます）
• Vempati A, Zhou C, Tam C, Khong J, Rubanowitz A, Tam K, Hazany S, Vasilev R, Hazany S. Subcision for Atrophic Acne Scarring: A Comprehensive Review of Surgical Instruments and Combinatorial Treatments. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2023 Jan 18;16:125-134. PMID: 36698445.