2025.12.19 ポテンツァ
顔のほてり感はなぜ起こる?酒さ・赤ら顔の原因と治し方を皮膚科専門医が徹底解説
顔のほてりとは?よくある症状
顔のほてりとは、
- 顔が熱く感じる
- 赤みとともにジンジン・ヒリヒリする
- 暑くないのに顔だけ熱感がある
- 飲酒時・辛い物を食べた時・緊張時に顔の赤みが悪化する
といった自覚症状を指します。見た目の赤みを伴う場合もあれば、赤みが強くなくても熱感だけが目立つ場合もあります。
特に赤ら顔・酒さの方では、「赤みそのもの」よりも「ほてり感やヒリヒリ感」の方がつらいと感じて受診されるケースも多くみられます。
顔のほてりの主な原因

顔のほてりの原因は一つではなく、以下のように複数存在します。
- 赤ら顔・酒さ
- 更年期障害
- 内服薬の副作用(特に高血圧治療薬であるカルシウム拮抗薬)
- 甲状腺機能亢進症
- 不安・ストレス・自律神経の乱れ
この中でも、皮膚科を受診される方で特に多いのが「赤ら顔・酒さによるほてり」です。本記事では、この赤ら顔・酒さに伴うほてり感に焦点を当てて詳しく解説します。
なぜ赤ら顔・酒さではほてり感が出るのか

皮膚神経の「過敏状態」が鍵
赤ら顔や酒さの皮膚では、皮膚の末梢神経が過敏な状態になっていることがわかっています。
具体的には、
- TRPV1(トリップブイワン)
- TRPV4
- PAR-2
といった刺激受容体が皮膚神経に過剰に発現しています。
これらの受容体は、
- 温度変化
- 紫外線
- アルコール
- 香辛料
- 摩擦
- 顔ダニ(ニキビダニ・デモデックス)
といった刺激に反応し、神経を興奮させます。その結果、血管が拡張し、皮膚温が上昇して「ほてり感」として自覚されるのです。
TRPV1とは?
TRPV1は、唐辛子の辛味成分(カプサイシン)を感じる際にも活性化する受容体です。赤ら顔・酒さの方が「辛い物で一気に顔が熱くなる」のは、このTRPV1が過剰に反応しているためと考えられています。
顔のほてり治療で重要な4つのポイント
顔のほてりを改善するには、次の4点を総合的に整えることが重要です。
① 外からの刺激を減らす
- 急激な温度差を避ける
- 香辛料・アルコールの摂取を控える
- 紫外線対策を徹底する
- ニキビダニ対策を行う(イベルメクチンクリームなど)
② 過敏になった神経を落ち着かせる
TRPV1やTRPV4などの刺激受容体の発現を抑えることで、ほてりを感じにくい皮膚状態を作ります。
③ 皮膚の炎症を抑える
炎症が強いほど、TRPV1の発現や血管拡張はさらに増強されます。炎症を抑えることは、ほてり治療の土台となります。
④ 増えて拡張した血管を減らす
赤ら顔・酒さでは、血管が増え、さらに拡張しやすくなっています。これにより皮膚温が上昇し、ほてり感が悪化します。
この4つが互いに影響し合い、「ほてり → 炎症 → さらにほてり」という悪循環していることが特徴です。
ほてり感対策のスキンケア
ほてり対策のスキンケアで最も重要なのは、
- 肌バリアを守る
- 炎症を起こさない
この2点です。
セラミド
セラミドは元々肌にある肌バリア機能成分ですが、赤ら顔・酒さの皮膚ではセラミドが不足していることが報告されています。セラミドを補うことで、
- 肌バリア機能の回復
- 外的刺激の軽減
- 炎症・ほてり感の改善
が期待できます。過去の研究でも、セラミド保湿によって赤ら顔・酒さの症状が軽減することが報告されています。
トラネキサム酸
トラネキサム酸は、
- 抗炎症作用
- 血管新生抑制作用
を併せ持つ成分です。赤ら顔では肌に炎症が起こり、血管が増え赤みの原因となっています。トラネキサム酸は赤ら顔の「炎症+血管増生」の両方にアプローチできるため、非常に相性の良い成分です。
外用だけでなく、内服、肌への直接注入(局所注射)、エレクトロポレーション(ケアシスS)による導入も有効です。当院では過去の研究でも効果が報告されている5%トラネキサム酸ローションをおすすめしています。
アゼライン酸
アゼライン酸は酒さ治療として世界的に使用されている成分で、
- 抗炎症作用
- 皮脂抑制作用
があります。当院でも20%アゼライン酸配合のAZAクリアをおすすめしています。ただし高濃度のアゼライン酸は刺激感が出ることがあるため、ほてりが強い方は低濃度(約5%)や誘導体配合製品から開始することをおすすめします。
4-t-ブチルシクロヘキサノール
TRPV1の活性を抑える作用が報告されている成分で、ほてり感の軽減を目的としたスキンケアに適しています。
ほてり感に対する塗り薬・飲み薬による治療
赤ら顔や酒さによるほてり感の治療では、皮膚の炎症・神経過敏・血管拡張を抑えることが重要になります。そのため当院では、症状や重症度に応じて外用薬(塗り薬)と内服薬(飲み薬)を組み合わせて治療を行います。
外用薬(塗り薬)による治療

イベルメクチンクリーム
イベルメクチンクリームは、赤ら顔や酒さの原因の一つと考えられているニキビダニ(デモデックス)を抑制する作用を持つ外用薬です。ニキビダニの増殖を抑えるだけでなく、高い抗炎症作用があることも特徴です。
保険適用外の自費診療にはなりますが、赤み・ほてり感・ヒリヒリ感・酒さに伴う丘疹(ぽつぽつ)に対して効果が報告されています。当院でも、赤ら顔や酒さによるほてり感が強い患者様によく処方しており、症状の改善を実感される方が多い塗り薬です。
皮膚の炎症が落ち着くことで、TRPV1などの刺激受容体の活性も下がり、ほてりを感じにくい状態へ導くことが期待できます。
ロゼックスゲル(メトロニダゾール)
ロゼックスゲルは、酒さに対して唯一保険適用となっている外用薬です。1日2回の外用が基本となります。
抗炎症作用と抗菌作用を併せ持ち、特に酒さの初期〜中等症の赤みや丘疹に使用されることが多い薬剤です。
ただし、ほてり感が非常に強い場合には、単独では効果が不十分なこともあり、他の外用薬や内服薬、施術との併用を検討します。
エリセゴゲル(ミルバソゲル/ブリモニジンゲル)
エリセゴゲル(ブリモニジンゲル)は、血管を収縮させる作用を持つ外用薬で、紅斑毛細血管拡張型酒さの赤みに対して使用されます。
皮膚表面の血管が収縮することで、赤みだけでなく、ほてり感の改善も期待できます。効果は比較的速やかに現れ、約12時間程度持続することが特徴です。
即効性がある一方で、根本治療ではないため、炎症や神経過敏を抑える治療と併用することが重要です。
内服薬(飲み薬)による治療

漢方薬
赤ら顔やほてり感は、自律神経の乱れや体質が関与していることも多く、漢方薬が有効なケースも少なくありません。当院では症状に応じて、
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
などを使い分けています。
特に、汗をかきやすい方、口の中が乾きやすい方、ほてり感が強い方では、白虎加人参湯から開始することも多くなります。体質改善を目的とした治療として、他の治療と併用します。
ビブラマイシン(ドキシサイクリン)・ミノマイシン(ミノサイクリン)
ドキシサイクリンやミノサイクリンは、酒さ治療で世界的によく使用されている内服薬です。抗菌作用に加えて、抗炎症作用が強いことが特徴で、特に酒さに伴う丘疹や膿疱(ぽつぽつ)に高い効果を示します。
近年の研究では、これらの抗生剤にTRPV1の活性を抑制する作用があることも報告されており、赤みやぽつぽつだけでなく、ほてり感の改善にも効果が期待できるとされています(PMID: 39097930)。
症状や体質に応じて、低用量での継続投与を行うケースも多く、副作用に配慮しながら治療を進めます。
イソトレチノイン
イソトレチノインは、ビタミンA誘導体の内服薬で、海外では重症ニキビ治療として広く使用されています。皮脂分泌抑制作用や毛穴詰まり改善効果に加え、強い抗炎症作用を持つため、酒さ治療としても用いられます。
さらに、イソトレチノインにはTRPV1の発現を抑制する作用があることも報告されており、赤ら顔や酒さによるほてり感の改善が期待できます。
ただし、皮膚や唇の乾燥が起こりやすい薬剤であるため、もともと乾燥が強い赤ら顔の方には注意が必要です。使用する場合は、保湿ケアや用量調整を行いながら慎重に治療を進めます。
※イソトレチノインについてはイソトレチノインのページもご参照ください。
しっかり治療したい方におすすめの施術

ポテンツァ(POTENZA)
ポテンツァは、マイクロニードル(極細針)と高周波(RF)を組み合わせた治療で、皮膚に微細な刺激と熱エネルギーを与えることで、肌の再生を促す治療法です。毛穴の開き、ニキビ跡、シワ治療として知られていますが、近年では赤ら顔や酒さに対する効果も多く報告されており、注目されている治療です。
赤ら顔や酒さの方では、皮膚の炎症が慢性的に続き、ほてりの原因となる神経受容体(TRPV1)が過剰に発現していることがわかっています。ポテンツァは、皮膚深部に均一に熱刺激を与えることで、炎症を鎮めると同時にTRPV1の発現を抑制し、ほてり感を改善する効果があることが報告されています。
また、赤ら顔の患者様では、頬の皮膚温が健常な方より高い状態にあることが知られていますが、ポテンツァ治療後に皮膚温が低下し、ほてりを感じにくくなったという報告もあります(PMID: 33800730)。
単に赤みを一時的に抑えるのではなく、ほてりの「起こりにくい肌環境」を作る治療である点がポテンツァの大きな特徴です。
炎症が強く、スキンケアや塗り薬だけではほてりが改善しにくい方、赤みと同時に毛穴や肌質も改善したい方には特におすすめの治療です。
※ポテンツァについてはポテンツァのページもご参照ください。
マイクロボトックス
マイクロボトックスは、シワ治療に使用されるボツリヌストキシン(ボトックス)を、皮膚の浅い層にごく少量ずつ細かく注入する治療法です。海外では赤ら顔や酒さによる赤み・ほてり治療としても広く行われています。
赤ら顔や酒さでは、皮膚の神経が過敏な状態になり、わずかな刺激でも血管が拡張してしまいます。マイクロボトックスは、この過敏になった神経の働きを抑え、血管が過剰に拡張するのを防ぐ作用があることがわかっています。その結果、顔の赤みだけでなく、ほてり感やヒリヒリ感の改善が期待できます(PMID: 35312149)。
マイクロボトックスは、比較的即効性が期待できる治療であるため、「早くほてり感を抑えたい」「イベント前に赤みを落ち着かせたい」といった方にも向いています。また、皮脂分泌の抑制効果や毛穴の引き締め効果もあるため、赤ら顔と同時に毛穴・皮脂が気になる方にもおすすめです。
ポテンツァやVビームと併用することで、炎症・神経過敏・血管拡張のそれぞれに多角的にアプローチでき、より高い治療効果が期待できます。
Vビーム(Vbeam)
Vビームは、595nm波長の色素レーザーで、血管に選択的に反応する特性を持っています。赤ら顔や酒さの赤みの原因となっている拡張・増生した血管をピンポイントで破壊することで、肌の赤みやほてり感を改善する治療です。
赤ら顔では、皮膚表面や浅い層に血管が増え、常に血流が多い状態になっているため、皮膚温が上がりやすく、ほてりを感じやすくなっています。Vビームによって血管を減らすことで、皮膚温が下がり、赤みだけでなくほてり感の改善にもつながります。
赤ら顔の治療では、1回で完結する治療ではなく、5~10回程度の継続治療がおすすめとなることが多いです。
また、ポテンツァで皮膚の炎症や神経過敏を抑えたうえでVビームを行うことで、赤み・ほてりの改善スピードが早くなる傾向があり、当院でも併用治療をおすすめしています。
※VビームについてはVビームのページもご参照ください。
当院の症例
症例1 【50歳代男性】頬の赤み改善(2回実施)

頬のほてり感、赤みとポツポツがお悩みで受診されました。塗り薬のイベルメクチンクリーム、ビブラマイシン内服、ポテンツァ赤み・赤ら顔モードで治療を行いました。2回の治療で赤みやほてりがかなり改善しています。
【費用】ポテンツァ赤み・赤ら顔モード 頬・鼻 1回 44,000円(税込)
イベルメクチンクリーム30g 4,400円(税込)
ビブラマイシン内服
本施術では、総額92,400円(税込)
【副作用・リスク】痛み・腫れなど
症例2 【50歳代女性】酒さ・赤ら顔(5回実施)

顔の赤みとほてり感で受診されました。イベルメクチンクリームを併用しながら、Vビーム照射を5回行い頬の赤みやほてり感が改善しました。
【施術】Vビームレーザー治療5回
【費用】Vビームレーザー両頬 21,780円(税込)
イベルメクチンクリーム 30g 4,400円(税込)
(本施術では総額113,300円(税込))
【副作用・リスク】腫れ・内出血など
当院の赤ら顔・ほてり治療
当院では、外用薬・内服薬・美容施術を組み合わせたオーダーメイド治療を行っています。ほてり感はレーザー単独では改善しきれない場合もあり、
- 炎症の強さ
- 血管の増生・拡張の程度
- 肌バリアの状態
を総合的に評価することが重要です。
顔のほてりや赤ら顔でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
当院の赤ら顔・酒さ治療については赤ら顔(酒さ)のページもご参照ください。
<参考資料・文献>
- 日本皮膚科学会 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023(PDFが開きます)
- アメリカ皮膚科学会 How to prevent rosacea flare-ups
- Mohyi D, Tabassi K, Simon J. Differential diagnosis of hot flashes. Maturitas. 1997 Jul;27(3):203-14. PMID: 9288692.
- Sulk M, Seeliger S, Aubert J, Schwab VD, Cevikbas F, Rivier M, Nowak P, Voegel JJ, Buddenkotte J, Steinhoff M. Distribution and expression of non-neuronal transient receptor potential (TRPV) ion channels in rosacea. J Invest Dermatol. 2012 Apr;132(4):1253-62. PMID: 22189789
- Picosse F, Rocha MA, Costa CS, Enokihara MMSES, Sanudo A, Bagatin E. A comparative exploration of immunohistochemical markers in patients with papulopustular rosacea undergoing treatment with oral isotretinoin versus doxycycline. Int J Dermatol. 2025 Mar;64(3):546-551. PMID: 39097930.
- Oh S, Son M, Park J, Kang D, Byun K. Radiofrequency Irradiation Modulates TRPV1-Related Burning Sensation in Rosacea. Molecules. 2021 Mar 6;26(5):1424. PMID: 33800730
- Calvisi L, Diaspro A, Sito G. Microbotox: A prospective evaluation of dermatological improvement in patients with mild-to-moderate acne and erythematotelangiectatic rosacea. J Cosmet Dermatol. 2022 Sep;21(9):3747-3753. PMID: 35312149.
この記事を書いた人
上野御徒町ファラド皮膚科 院長
上條 広章(かみじょう ひろあき)
- 資格
- 医学博士(東京大学大学院医学系研究科)
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本美容外科学会(JSAS)認定 美容外科専門医
- 日本レーザー医学会専門医
- 所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本美容外科学会(JSAS)
- 日本美容皮膚科学会
- 日本レーザー医学会
- 受賞歴
- 第7回日本皮膚悪性腫瘍学会賞(石原・池田賞)
- 第20回マルホ研究賞
- Poster Prize, 47th Annual Meeting of European Society for Dermatological Research
略歴
| 2012年 | 東京大学医学部医学科 卒業 |
|---|---|
| 2014年 | 藤枝市立総合病院 初期研修 修了 |
| 2014年 | 東京警察病院 皮膚科 |
| 2016年 | 東京大学医学部附属病院 皮膚科 |
| 2019年 | 東京大学医学部附属病院 皮膚科 助教 アトピー性皮膚炎専門外来、皮膚悪性腫瘍専門外来、レーザー専門外来担当 |
| 2021年 | 都内大手美容外科 入職 |
| 2022年 | 都内大手美容外科 本院 部長 美容皮膚科治療監修を担当 |
| 2022年 | 上野御徒町ファラド皮膚科 開院 |








