肌のトラブル

2025.10.31 肌のトラブル

蒙古斑は消えない?レーザー治療が必要なの?異所性蒙古斑との違いと治療方法を解説

はじめに

異所性蒙古斑の幹部写真とともに症状、治療方法を詳しく解説

赤ちゃんのお尻に青っぽいあざを見たことはありますか?
それは「蒙古斑(もうこはん)」と呼ばれる、主にアジア人に多く見られる色素斑です。多くの場合、成長とともに自然に消えるため心配いりませんが、部位や濃さによっては大人になっても残るケースもあります。特にお尻や腰以外に見られる「異所性蒙古斑」と呼ばれるタイプは自然には消えにくく、レーザー治療が必要な場合があります。
本記事では、蒙古斑と異所性蒙古斑の違い、消えるかどうか、そしてレーザー治療による改善法について詳しく解説します。

蒙古斑とは?特徴と原因

蒙古斑(Mongolian spot)とは、生まれつき現れる青色~灰黒色のあざのことを指します。生後1週間で目立ってくることもあります(PMID: 24340274)。
お尻や腰に見られ、生後すぐに気づくことが多いです。様々な大きさや形をしており、一部のみ濃い場合もあります。

原因

皮膚のメラニン色素をつくる「メラノサイト」が、本来は表皮に位置するべきところを真皮層に残ったままになることで発生します。チンダル現象という、光の屈折の関係で青く見えます。真皮メラノサイト内のメラニン量、真皮メラノサイトの量、メラノサイトの存在する深さによって濃さが変わります。

出現頻度

  • 日本人では新生児の約90~100%に見られる(PMID: 7028354)
  • 白人では約10%程度、黒人では約90~100%に見られる
  • 男女差はほとんどなし

自然経過

通常は1歳でもっとも目立ち、2~4歳より徐々に薄くなり、5、6歳になると残存率は50%、その後さらに消えていき10、11歳頃には3%前後になります。11歳以降では自然に消えることは期待できず持続性蒙古斑と呼ばれます。このように成人の3~4%に残ってしまいます(PMID: 5555860)。

異所性蒙古斑とは?通常の蒙古斑との違い

蒙古斑と異所性蒙古斑の違いを詳しく解説

位置の違い

一般的な蒙古斑はお尻まわりに見られますが、異所性蒙古斑(ectopic Mongolian spot)は次のようなお尻以外の部位に現れます。

  • 肩・背中の上部・胸・お腹
  • 腕や足

消えにくさ

異所性蒙古斑は通常の蒙古斑よりも自然に消えにくい傾向があります。
多くの場合、学童期を過ぎても残るため、見た目の問題やコンプレックスにつながることがあります。

異所性蒙古斑の特徴まとめ

項目通常の蒙古斑異所性蒙古斑
発生部位お尻・腰顔・腕・足・背中上部など
色調青色青色
自然消退多くは就学前に消失残存することが多い
治療の必要性濃い場合のみ必要見た目が気になる場合は治療対象

蒙古斑・異所性蒙古斑の治療は必要?自然に消える?

通常の蒙古斑は基本的には経過観察でOK

一般的な蒙古斑は自然に消える可能性があり、治療の必要はほとんどありません。
ただし、蒙古斑も3~4%の方は大人になっても残ることがあり、赤ちゃんの時期でも濃いものは思春期以降も残る場合があります濃い蒙古斑は相談の上、場合によってはレーザー治療を行う場合があります。赤ちゃんの時にレーザー治療することも可能ですし、大人になってから治療することも可能です。

異所性蒙古斑はレーザー治療が有効

異所性蒙古斑も自然には薄くなっていきますが、蒙古斑より薄くなるスピードは遅く、濃い異所性蒙古斑は大人になっても残ってしまうことが多くなります。赤ちゃんの時から濃いものは、レーザー治療による除去が一般的です。また大人になっても残っている異所性蒙古斑もレーザー治療が可能です。

レーザー治療による蒙古斑の改善方法

Qスイッチルビーレーザー治療による異所性蒙古斑の改善方法について解説

使用される主なレーザー

治療には、Qスイッチレーザーやピコレーザーが用いられます。これらは皮膚の深い層にあるメラノサイトに反応し、あざを薄くしていきます。当院では蒙古斑や異所性蒙古斑のメラニン・メラノサイトに反応がとてもよいQスイッチルビーレーザーで治療を行っています。Qスイッチレーザーについての詳細はこちらもご参照ください。

治療回数と経過

  • 1回の照射では完全に消えないことが多い
  • 通常は3〜6回程度の照射が必要。お子様では回数が少なく、大人では回数が多く必要です。
  • 治療間隔は3~6か月おきが目安で、場所によっては1年空けて照射することもあります
  • 場所や年齢にもよりますが徐々に色が薄くなり、最終的に目立たなくなります

痛み・ダウンタイム

治療中は輪ゴムで弾かれたような軽い痛みがある程度です。

エムラクリームという麻酔クリームやペンレステープという麻酔テープを使った表面麻酔を行い、痛みを軽減させることが可能です。

レーザー治療後は、顔の場合はビジダーム(ハイドロコロイド)等の再生テープ保護、顔以外の場合は軟膏を塗った後ガーゼ保護を1週間ほど行います。

1週間後に経過観察で受診していただき、患部の状態を確認いたします。
照射後は一時的に赤みやかさぶた、ヒリヒリ感が出ることがありますが、数日〜1週間で落ち着きます。まれに水ぶくれができることがありますが、無理につぶさず軟膏とガーゼ保護を続けて診察にいらしてください。

治療後1ヶ月後あたりにレーザー治療部位が茶色くなり、色素沈着が出ることがあります。特に背中や胸など、洋服で普段覆われている場所に出やすい傾向があります。色素沈着は内服薬や塗り薬でケアできますので、お気軽にご相談ください。

レーザー治療を検討する際の注意点

1. 医師の診断が重要

青あざの中には、太田母斑ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)青色母斑など、蒙古斑と似た別の疾患もあります。必ず皮膚科で診断を受けましょう。

2. 保険適用の可否

蒙古斑や異所性蒙古斑は、治療目的や場所によって保険適用が異なります。保険適用になるケースもあるため、診察でご相談ください。

3. 紫外線対策が大切

蒙古斑や異所性蒙古斑の患部が日焼けしているとレーザーによる副作用が出やすくなります。またレーザー治療後は肌が敏感になり、日焼けしやすいとともに色素沈着してしまうことがあります。治療の前後で日焼け止めクリームやUVカットフィルム(エアウォールUV)、衣服での保護を心がけましょう。特にUVカットの衣服も増えていますので夏は意識してそのような衣服を選ぶことをおすすめしています。

子どもの場合の治療タイミング

蒙古斑や異所性蒙古斑へのレーザー治療は早期から開始すると効果が高い傾向にあります。子どもでは肌が薄いため、レーザーが深部まで届きやすく高い治療効果が期待できるためです。当院では近隣の小児科病院よりご紹介いただき、生後1ヶ月頃から治療を行っております。成長しても残ってしまう濃い蒙古斑や異所性蒙古斑は早めに診察させて頂き、様子をみるか、早期にレーザー治療するか相談しながら経過をみていきます。

当院の症例

症例 【0歳3ヶ月男児】右大腿の異所性蒙古斑

異所性蒙古斑のチオ両症例写真とともに費用、保険適用可否、治療解説などをご案内

生まれつき右足に青あざがありレーザー治療をご希望されました。Qスイッチルビーレーザーを3ヶ月ごと3回照射し異所性蒙古斑が薄くなっています。

【費用】Qスイッチルビーレーザーによる右大腿の異所性蒙古斑 約7,000円(保険適用3割負担)(本症例では、総額約21,000円(税込))
【副作用・リスク】痛み・赤み・水疱形成など

料金

保険診療の場合約6,000円〜12,000円(照射面積で変わります)
自費診療の場合直径が5mmまで・・・5,500円
※ 5mm以上は5mmごとに5,500円追加

まとめ:異所性蒙古斑は治療で改善できる

  • 通常の蒙古斑はほとんどが自然に消えますが大人になっても残ることもあり
  • 異所性蒙古斑はお尻や腰以外に出現し、残りやすい
  • 見た目が気になる場合は、レーザー治療で改善効果が期待できる
  • 医師の診断のもと、適切な治療時期と方法を選ぶことが大切

よくある質問

Q1. 蒙古斑は大人になっても残る?

A. 通常の蒙古斑は小学生ごろまでに消えることが多いですが、3~4%ほどは大人になっても残ってしまいます。異所性蒙古斑も成長にしたがい薄くなっていきますが、大人になっても残りやすい特徴があります。

Q2. レーザー治療は何回で消えますか?

A.個人差はありますが、3~6回の照射で目立たなくなることが多いです。皮膚の薄い小児ではレーザーの効きが良い傾向があります。

Q3. 痛みはありますか?

A.軽度のチクッとした痛みがありますが、麻酔クリームや麻酔テープによる表面麻酔を使えば問題なく施術可能です。

Q4. 子どもでも治療できますか?

A.はい。当院では近隣小児科よりご紹介いただき、生後1ヶ月ごろより治療を行っております。

監修医師からのメッセージ

蒙古斑は多くの方に見られますが大人になっても残ってしまうことがあります。また異所性蒙古斑も残ってしまうことが多いアザになります。
現在では安全で効果的なレーザー治療が確立されていますので、気になる場合は一度当院にご相談ください。

異所性蒙古斑についてと当院の症例は異所性蒙古斑のページでも紹介しております。

参考文献>

  • Hidano A. Persistent Mongolian spot in the adult. Arch Dermatol. 1971 Jun;103(6):680-1(PMID: 5555860).
  • Gupta D, Thappa DM. Mongolian spots: How important are they? World J Clin Cases. 2013 Nov 16;1(8):230-2(PMID: 24340274).
  • Cordova A. The Mongolian spot: a study of ethnic differences and a literature review. Clin Pediatr (Phila). 1981 Nov;20(11):714-9(PMID: 7028354).

この記事を書いた人

上條 広章

上野御徒町ファラド皮膚科 院長

上條 広章(かみじょう ひろあき)

  • 資格
    • 医学博士(東京大学大学院医学系研究科)
    • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
    • 日本美容外科学会(JSAS)認定 美容外科専門医
    • 日本レーザー医学会専門医
  • 所属学会
    • 日本皮膚科学会
    • 日本美容外科学会(JSAS)
    • 日本美容皮膚科学会
    • 日本レーザー医学会
  • 受賞歴
    • 第7回日本皮膚悪性腫瘍学会賞(石原・池田賞)
    • 第20回マルホ研究賞
    • Poster Prize, 47th Annual Meeting of European Society for Dermatological Research

略歴

2012年 東京大学医学部医学科 卒業
2014年 藤枝市立総合病院 初期研修 修了
2014年 東京警察病院 皮膚科
2016年 東京大学医学部附属病院 皮膚科
2019年 東京大学医学部附属病院 皮膚科 助教
アトピー性皮膚炎専門外来、皮膚悪性腫瘍専門外来、レーザー専門外来担当
2021年 都内大手美容外科 入職
2022年 都内大手美容外科 本院 部長
美容皮膚科治療監修を担当
2022年 上野御徒町ファラド皮膚科 開院

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