2024.06.26 じんましん
湿疹と蕁麻疹の違いとは?|見分け方や治療のポイントを解説
湿疹やじんましんは、誰にでも起こり得る皮膚病の一種です。
今回は、症状・期間・原因などにおける湿疹とじんましんの違い、見分け方、当院の治療法やそれぞれの治療の副作用などをご説明します。
湿疹とじんましんは何が違う?
湿疹とは
湿疹とは、表皮や真皮上層で生じる皮膚の炎症の総称です。皮膚が乾燥し、赤みやかゆみを主症状とし、全身のどこにでもあらわれ、皮膚のジュクジュクやブツブツが出ることもあります。改善までに時間がかかり、治った後も色素沈着を残すことが多いです。アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、貨幣状湿疹など、さまざまな種類があります。
じんましんとは
じんましんは、真皮層の血管から水分が漏れ出る皮膚疾患です。強いかゆみの症状に伴い、皮膚が赤く盛り上がります。また夕方から夜にかけて症状が出ることが多く、皮膚に突然現れ、短時間で跡形もなく消えてしまうことが特徴です。一日を通して発疹があらわれたり消失したり、症状が出る部位が移っていくことや地図状に広がっていく場合もあります。
直接的な原因が特定されずに出現する場合を特発性蕁麻疹といい、患者さまの9割を占めます。蕁麻疹診療ガイドライン 20181)によると、発症してから6週間以内の蕁麻疹を急性蕁麻疹、6週間以上続く蕁麻疹を慢性蕁麻疹といいます。また特定の刺激などによって生じる蕁麻疹を刺激誘発型蕁麻疹といいます。物理的蕁麻疹、アレルギー性蕁麻疹などに分けられます。
症状や特徴、症状が続く期間や原因には以下のような違いがあります。
湿疹 |
じんましん | |
---|---|---|
症状 |
急性湿疹: 赤み、かゆみ、水疱、ブツブツ、丘疹 慢性湿疹: 皮膚のゴワゴワ感、ザラつき |
赤い盛り上がり(膨疹)、むくみ、 |
特徴 | 表皮の炎症、改善まで時間がかかり、色素沈着を残すことが多い |
真皮層の血管から水分が漏れ出る、 |
期間 | 数日間から長期に及ぶ(慢性湿疹) |
急性じんましん: 1週間程度 慢性じんましん: 1ヵ月以上、 |
原因 | 食べ物、金属、化粧品、細菌、ハウスダスト、バリア機能の低下、原因不明な場合もある | 食べ物、薬剤、温度差、紫外線、 原因不明な場合もある |
湿疹とじんましんの見分け方
湿疹とじんましんの見分け方として、じんましんは突然発症して数時間で消えることが特徴です。
湿疹は、かさかさや傷口のジュクジュク、水疱ができ、色素沈着が残りやすいです。じんましんの場合は皮膚が盛り上がりますが、傷口や水疱ができることはありません。
通常は視診と問診で湿疹かじんましんかの診断を確定できます。お悩みの方は、丁寧に診察し、治療法をご提案しますので一度当院にご相談ください。
湿疹とじんましんの治療方法
湿疹とじんましんには、主に以下のような治療法があります。
湿疹
薬物療法
湿疹の外用薬にはさまざまな種類がありますが、症状に合わせて使用することが大切です。たとえば、アレルギーが原因となっている場合はステロイド薬、細菌感染を起こしている場合には抗生物質で細菌を抑制します。
ステロイド薬は合成副腎皮質ホルモンを配合した外用薬です。もともと副腎皮質ホルモンは体内で生成されているホルモンで、炎症を抑える作用があります。ステロイド薬は副腎皮質ホルモンの構造を模して、化学合成された合成副腎皮質ホルモンを配合しているため、かゆみや赤み、腫れなどの症状を抑え、炎症が生じることを抑える作用があります。
また、全身に症状が続いている場合、症状が広範囲に及んでいる湿疹などの場合、内服薬の使用、または外用薬と併用することもあります。
光線療法(紫外線療法)
紫外線には免疫反応を抑制するはたらきがあり、利用方法によってはさまざまな皮膚病に効果的だといわれています。紫外線療法は、UVA(320~400nm)・UVB(280~320nm)などの紫外線を利用して治療を行います。現在では、UVBの中でも308~313nmの波長が有効とされ、311nmを中心とした「ナローバンドUVB」の装置や、308nmの「エキシマライト」が開発されています。症状によって2つの装置を使い分けることによって、より効率的に治療ができるようになっています。
当院では、紫外線を体全体に照射する「ナローバンドUVB」、体の一部分にだけ照射する「エキシマライト」の両方を完備しています。基本的には、症状が広範囲に及ぶ場合はナローバンドUVB、一部分だけに症状がみられる場合にはエキシマライトを照射します。患者さまの症状に合わせて治療を行っています。
じんましん
抗ヒスタミン薬
蕁麻疹は、そのほとんどが抗ヒスタミン薬で症状が改善されることが多いです。蕁麻疹はヒスタミンと呼ばれる成分によって赤みやむくみを生じます。肥満細胞という免疫細胞の中にアレルギーを引き起こすヒスタミンなどを多く含んでいます。ヒスタミンを抑制するための薬剤が抗ヒスタミン薬です。市販薬では、「アレジオン」「アレグラ」などで知られています。効果の効き具合によって、薬の量を調整できるタイプもあります。
ステロイドや免疫抑制剤の内服
抗ロイコトリエン薬は、ロイコトリエンと呼ばれる蕁麻疹の膨疹に関係する物質を抑制します。抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬などの補助的治療薬を使用しても改善しない場合、ステロイドや免疫抑制剤の内服薬を処方する場合があります。慢性蕁麻疹の場合、内服薬の量や回数を少しずつ減らして様子を見ます。
抗IgE抗体(ゾレア) 当院では行っておりません
内服薬で症状が改善されない場合、ゾレアという注射の薬もあります。蕁麻疹の反応に直接の原因とされるIgEを阻害します。食べ物や外部刺激など、直接の原因が特定されず、内服などを行っても日常生活に支障をきたすほどの症状が継続して出現する場合に適応となります。4週間に1回、両肩に1本ずつ注射します。当院では行っておらず、大きい病院を紹介いたします。
治療の副作用とリスク
薬物療法(ステロイド薬)
主な副作用として、皮膚が薄くなる、毛細血管拡張、ニキビ、酒さ様皮膚炎、副腎皮質機能の抑制などがあります。
紫外線療法
施術時間は5分程度です。
主な副作用として、照射時の肌の赤み、ほてり、ヒリヒリ感があります。
治療開始後は1週間に2回程度、その後は状態に応じて1週間に1回程度、または2週間に1回程度の治療を行います。
抗ヒスタミン薬
主な副作用として、口の渇き、めまい、ふらつき、眠気、倦怠感、下痢などがあります。
ステロイドや免疫抑制剤の内服
主な副作用として、熱感、ヒリヒリ感、皮膚真菌症などがあります。
抗IgE抗体(ゾレア)
主な副作用として、頭痛、鼻閉感、アナフィラキシーなどがあります。
いつまで治療すべきか
急性湿疹は早い段階で治療できれば短期間で改善が見込めますが、慢性湿疹まで悪化してしまった場合は改善までに時間を要します。
蕁麻疹診療ガイドライン 20181)によると、薬物療法によって症状が改善された場合も、抗ヒスタミン薬の内服を続けることが推奨されています。急性蕁麻疹の場合は数日~1週間ほど、発症から2ヵ月以内の慢性蕁麻疹の場合は1ヵ月ほど、発症から2ヵ月以上経過している慢性蕁麻疹の場合は2ヵ月ほど続けることを目安としています。
湿疹、じんましんでお悩みの方は上野御徒町ファラド皮膚科へ
湿疹、じんましんは突然起こる場合があります。湿疹・じんましん共に悪化してしまうと治療に時間を要する場合があるので、早めの受診がおすすめです。
当院では、患者さまの症状に合わせてお薬の調整も行っています。症状がひどくなる前に気軽にご相談ください。
<参考文献>
1)https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/urticaria_GL2018.pdf