2024.04.04 シミ
それ、ADMかも?シミとの違いや治療⽅法を解説
「シミの治療をしていても、なかなか消えない」「灰褐色のシミができて気になっている」というお悩みはありませんか。
いわゆるシミといってもさまざまな種類があり、治療法も異なります。
今回は、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)や他のシミとの違い、当院の治療法などをご説明します。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは
ADM1)2)とは、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM:Acquired Dermal Melanocytosis)の略語で、頬やおでこ、鼻などにみられるシミのような斑点のことです。
シミと似ていますが、太田母斑や異所性蒙古斑などと同様にアザの一種とされ、レーザー治療を保険適用で受けられます。
また以前は太田母斑の亜型とされていましたが、現在では別の疾患と考えられています。
直径1~3mmほどの灰褐色の斑点が多発し、特に日本人や中国人などアジア系の女性に多くみられます。
20歳代で発症し、IPLなどの光治療で効き目がみられないことからADMと分かる場合もあります。
両側左右対称性ですが、片側にだけ出ることもあります。
原因として紫外線や女性ホルモンが関係しているとされていますが、詳しいことは分かっていません。
シミは表皮という肌の浅い部分に生じますが、ADMの場合は表皮よりも深い部分にある真皮に発症します。
グレーや青色になるのは、肌の奥深くでメラニンが増えているためと考えられます。
肌の深い部分にあるため、レーザー治療が3~4回以上必要になります。
ADMは真皮に発生しているため、1回の治療で治ることはありません。
レーザー治療を3~4回以上照射することが必要です。
レーザー治療後、3ヵ月ほどでADMが薄くなっていきます。
ADMとシミとの違い
ADMと他のシミとの違い2)や見分け方には、主に以下のようなものがあります。
特徴 | ADM (後天性真皮メラノサイトーシス) |
老人性色素斑 (シミ)・日光黒子 |
肝斑 | そばかす(雀卵斑) |
---|---|---|---|---|
発生部位 | 肌の真皮層で発生し、頬やおでこ、鼻などに出る | 肌の表層い現れる。日光に暴露されやすい部分(顔・肩・手など) | 肌の表層に現れ、両頬などに見られる。 | 肌の表層に現れ、 両頬などに見られる。 |
色 | 灰褐色 | 茶褐色の場合が多いが、色の濃さは様々 | 薄茶色 | 薄茶色 |
発生時期 | 20歳頃 | 20歳頃 | 30~40歳代 | 幼少期から |
形状 | 直径1~3mmほどの斑点 | サイズは様々 | 左右対称にぼんやりと広がる | 小さなシミが 数多く見らえる |
原因 | 紫外線や女性ホルモンなどが関係していると考えられている | 紫外線 | 紫外線、女性ホルモン、遺伝的要因、肌の摩擦 | 遺伝の影響、紫外線 |
治療 | レーザー治療(光治療では治療できない) | レーザー治療 光治療 内服・外用薬 |
内服・外用薬、導入療法、ピーリング | 光治療、 レーザー治療 |
特記事項 | 真皮に発生、1回の治療で治ることはない。 3~4回以上のレーザー治療が必要。 |
時間が経つとともに盛り上がり、イボになることも。 | 間違った治療を行うと逆に濃くなることもある。 | 幼少期から生じる、 大人になってからは 発生しない。 |
老人性色素斑・日光黒子
いわゆる「シミ」のことを指します。
日光に暴露されやすい部分にできるシミで、小さいものや大きいものまでサイズもさまざまです。
時間が経つとともに盛り上がり、イボになることもあります。ADMの場合、頬に小さな斑点が生じ、20歳頃からみられることが特徴です。
老人性色素斑、日光黒子などのシミがADMと混在していることも多く、それぞれに異なった治療が必要になります。
肝斑
肝斑は、30~40歳代の女性に発生しやすい両頬にできるシミのことを指します。
紫外線や女性ホルモン、物理的な刺激などによって生じると考えられています。
紫外線が強くなる春~夏にかけて色が濃くなります。
60歳を過ぎると、自然治癒していくこともあります。
またADMは肝斑を合併しやすい特徴があるため、それぞれに適切な治療が必要になります。
そばかす(雀卵斑)
そばかすはシミの一種で、遺伝性のものとされ幼少期から両頬などに生じます。
またそばかすは薄茶色の小さなシミが数多くみられますが、ADMは灰褐色の斑点ができることが特徴です。
生じる時期も、そばかすは幼少期から、ADMは20歳頃からと大人になってから発生することに違いがあります。
ADMは発生部位や治療方法が他のシミと異なるため、適切な治療が必要です。
特に肝斑とは見分けがつかない場合が多く、光治療を行って効果がなくADMであることが発覚する場合も。
他のシミとの違いも見て、「もしかしたらこのシミはADMかも?」と思った方はクリニックに早めにご相談ください。
ADMの治療
一般的なシミの治療には光治療や内服・外用薬が有効ですが、ADMは他のシミと違って真皮層で発生するため、レーザー治療法を行わないと効果を得られません。
当院では、Qスイッチルビーレーザーで治療を行っています。
ADMは保険適用によるレーザー治療が可能です。
Qスイッチルビーレーザーはメラニンに吸収されやすく、正常な皮膚にはほとんど反応しない694nmという波長の光をもっています。
ADMのほか、太田母斑や扁平母斑、老人性色素斑など幅広い治療が可能です。
メラニンに吸収されるレーザーは、Qスイッチレーザーやピコ秒レーザーがありますが、 当院では保険適応の症状も多く、皮膚の深いところまで到達し、 シミを取りきる力が強いQスイッチルビーレーザーで治療を行っています。
ADMの場合は表面麻酔をしてレーザー治療をした後、1週間程度テープで保護していただきます。
茶色いテープのため、ほとんど目立ちません。
保険適用の治療は3ヵ月ごとになっているため、3ヵ月ごとに治療をしていきます。
ただし肌の状態や色素沈着が強く出ている場合には、6ヵ月の間隔をあけて治療をすることもあります。
また、ADMは他のシミと違って肌の奥深くにメラニンが生じているため、3~4回以上のレーザー照射が必要となります。
回数を重ねて薄くするのではなく、肌の状態を診ながら治療を進めていきます。
ADMは肝斑を合併しやすく、レーザーによって色素沈着を生じやすいことから、ハイドロキノンやトレチノイン、トラネキサム酸の内服や塗り薬などの併用も推奨しています。
当院の症例 【30歳代女性】両頬のADM
両頬のADMにQスイッチルビーレーザーを3ヶ月ごと2回照射しました。
2回照射後の4ヶ月後の経過の写真です。
ADMが薄くなり目立たなくなっています。
【費用】Qスイッチルビーレーザーによる両頬のADM治療 約7,000円(保険適用3割負担)(本症例では、総額約14,000円)
【副作用・リスク】痛み・赤み・水疱形成など
ADM治療の副作用・リスク
治療の経過や効果には個人差があります。
気になる症状がみられた場合には、速やかに医師へ相談しましょう。
Qスイッチルビーレーザー
炎症後色素沈着、色素脱失、傷跡などがあります。
極端に日焼けをしている部位は、赤みや火傷、水ぶくれなどが生じやすくなります。
ハイドロキノン
主な副作用として、赤みやかゆみ、乾燥などがあります。
長期間の使用によって白斑を起こす場合があるため、数ヵ月の使用後は休薬期間を設けます。
トレチノイン
主な副作用として、赤みやかゆみ、乾燥などがあります。
トレチノインによる副作用はレチノイド反応と呼ばれ、角質層が一時的に薄くなることにより、肌のバリア機能が低下し、刺激に弱くなることによって生じると考えられています。
レチノイド反応は3週間ほど続きますが、薬が適切に作用している目安にもなります。
レチノイド反応が強く出ている場合には、自己判断は止め、医師へ相談してください。
トラネキサム酸
主な副作用として、嘔吐、悪心、食欲不振、眠気、胸やけ、発疹などがあります。
妊娠中や授乳中の方、脳梗塞や心筋梗塞の既往歴がある方、血栓ができやすい方などは服用できないことがあります。
また以下に該当する場合、Qスイッチルビーレーザーの治療を受けられない可能性があります。必ず事前にご相談ください。
妊娠の可能性がある方、妊娠している方
皮膚に強い湿疹や炎症を起こしている方
料金
ADMのQスイッチルビーレーザーによる治療は、保険適用となります。
シミ、あざレーザー治療 Qスイッチルビーレーザー
保険診療の場合
3割負担の場合に必要な金額の目安です。
都内在住の中学生までのお子様は実費0円になります。
約6,000円~12,000円(照射面積で変わります)
肝斑がある場合など、下記の薬を併用する場合は自由診療(自費)となります。
肌質改善プログラムシミ・くすみ・肝斑治療、肌質改善
ナノトレチノイン(荒れにくいナノ粒子、15g 顔に使用し約3ヶ月分) | 14,300円 |
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ナノハイドロキノン(15g 顔に使用し約3ヶ月分) | 5,280円 |
美白・くすみ治療
TAホワイトクリームMD(トラネキサム酸クリーム) | 2,750円 |
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※料金は税込です。
ADMにお困りの方は、上野御徒町ファラド皮膚科へ
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は特に頬を中心として、おでこや鼻などにもみられる灰褐色のシミです。
20歳代のアジア人女性に発症しやすいことが特徴です。
ADMは太田母斑や異所性蒙古斑などと同様にアザの一種とされ、保険適用でレーザー治療が可能です。
気になる灰褐色のシミがある方は、当院へお気軽にご相談ください。
【参考】
(1)清水 宏.「あたらしい皮膚科学第3版」.中山書店.2018
(2)川田暁.『美容皮膚科ガイドブック第2版』中外医学社.2019.
<Qスイッチルビーレーザーについて(異なる目的での使用)>
- 医薬品医療機器等法上の承認:医薬品医療機器等法上、異所性蒙古斑、太田母斑や扁平母斑の除去などにおいて承認されていますが、その他の目的では承認されていません。
- 入手経路:グンゼメディカル株式会社より入手
- 国内の承認機器の有無:同一の成分や性能を有する他の国内承認機器等はありません。
- 諸外国における安全性等に関する情報:米国FDAの承認を受けています。
<ハイドロキノンについて>
- 医薬品医療機器等法上の承認:医薬品医療機器等法上、国内で承認されていません。
- 入手経路等:株式会社ナノエッグより入手
- 国内の承認医薬品の有無:同一の成分・性能を有する国内の承認医薬品等はありません。
- 諸外国における安全性などに係る情報:副作用として報告されているもの:色素脱失、発赤など
<トレチノインについて>
- 医薬品医療機器等法上の承認:未承認
- 入手経路等:株式会社ナノエッグより入手
- 国内の承認医薬品の有無:同一の性能を有する他の国内承認医薬品はありません。
- 諸外国における安全性などに係る情報:諸外国で重篤な安全性情報の報告はありません。
<トラネキサム酸について(異なる目的での使用)>
- 未承認医薬品等:本治療におけるトラネキサム酸は、医薬品医療機器等法上、国内で承認されていません。
- 入手経路等:株式会社スズケンより入手
- 国内の承認機器の有無:同一の成分や性能を有する他の国内承認機器等はありません。
- 諸外国における安全性等に係る情報:諸外国において、治療に伴う重大な副作用の報告はありません。