2025.01.24 コラム
ADMの基礎知識:その原因と症状をやさしく説明

ADMはAcquired Dermal Melanocytosisの略語であり、日本語では後天性真皮メラノサイトーシスといいます。
おでこや鼻にもみられますが、頬に見られることが最も多く、両頬上部に褐色~グレーや青色の細かいシミのような斑点が集まってみられます。
一見シミのようにみえますが、シミではなく太田母斑や異所性蒙古斑に近い「あざ」の一種になります。
「あざ」ですので保険適用でレーザー治療を受けることができます。以前は太田母斑の亜型として考えられていましたが、現在は異なる別の疾患として考えられています。
ADMは、アジア人女性に多く日本人にも多く見られます。女性の方に多いのですが、男性にも発症します。
10代後半~30歳代で出てくることが多く、日光のシミには効果のある光治療(IPL)が効かないことが特徴で、光治療(IPL)が効かないことでADMと判明することもよくあります。
この記事では、ADMの基礎知識から、その原因、治療法、日常ケアのポイントまでをご紹介します。
ADMの原因を知ることが改善の第一歩:ホルモンや紫外線など4つの影響
ADMの原因はいろいろありますが、主な要素として以下の4つが挙げられます(参考文献1)。
1.ホルモンバランス

女性に多いことからも分かるように、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの変化がADMに影響を与えることが突き止められています。
妊娠期や更年期など、ホルモンバランスが大きく変動する時期に発症や悪化が見られることがあります。
また、経口避妊薬(ピル)の使用が影響を与える場合もあります。
これらの背景により、女性特有の悩みとして注目されています。
2.日光・紫外線

紫外線はADMを引き起こす主要な要因の一つです。
長時間の紫外線を浴びると、肌に炎症が起こってしまい眠っていたメラノサイトを活性化しメラニンを作り出してしまいます。
また紫外線自体が肌のメラニン生成を促進し、表皮や真皮層に色素沈着を引き起こします。
また、日常的な紫外線の影響が蓄積されることで、ADMが悪化するリスクも高まります。
そのため、日焼け止めを使用し、適切な紫外線対策を行うことが重要です。
3. 遺伝的要素

家族にADMが見られる場合、そのリスクが高まることが報告されています。
遺伝的要因が関与するケースでは、色素沈着が生じやすい肌質や遺伝的なメラニン生成の傾向が影響していると考えられています。
例えば、親や祖父母に同様の症状が見られる場合、同じような症状を発症する可能性が高くなります。
また、遺伝的要因によるADMは、予防や治療において早期発見と適切なケアが特に重要です。
専門医による診断を受け、遺伝的な要因が疑われる場合には、長期的なケア計画を立てることがおすすめです。
4.肌の炎症や摩擦

肌に慢性的な炎症や摩擦がある場合、紫外線同様に眠っていたメラノサイトを活性化してしまいADMの原因になってしまうことがわかっています。
ADMはアトピー肌や乾燥肌の方に多く、これら肌質の方は慢性的に肌に炎症が起こりやすいためADMが発症しやすいと考えられています。
例えば、不適切なスキンケアや過度なピーリング、洗顔時に強く顔をこすって洗ってしまうなどがこれに該当します。
また、不適切な化粧品の使用やアレルギー反応による炎症も、ADMを悪化させる原因となります。
このような刺激を最小限に抑えるためには、優しいスキンケア製品の選択や、正しい洗顔方法を心がけることが重要です。
さらに、日常生活で頻繁に肌を触る癖がある場合も、注意が必要です。
炎症や摩擦を防ぐことで、色素沈着の進行を抑えることが可能です。
治療法の比較:最新のレーザー治療から自宅ケアまで
ADMの治療法には多くの選択肢があり、それぞれの特性を理解することが重要です。
1.レーザー治療

ADMの治療に最も効果的とされるのがレーザー治療です。
ファラド皮膚科では、レーザーの中でADMに対し、最も効果が高いとされるQスイッチルビーレーザーで治療を行っております。(参考文献2)
エムラクリームによる表面麻酔を行い、レーザー照射を行っていきます。表面麻酔も保険適用となっています。
当院では患者様ごとにカスタマイズした治療をご提供しており、肌の状態や色素沈着の深さなどを医師が診察し、最適な設定を行います。
使用するQスイッチルビーレーザーの種類や照射レベルを細かく調整することで、高い効果を得ることができます。
レーザー後は肌が弱い状態となるため、1週間ほどテープ保護をおすすめしています。
茶色いテープをおすすめしていますのでそれほど目立ちませんが、テープが1週間できるときにレーザーの治療をおすすめしています。
レーザー治療の保険適用は3ヶ月ごとになりますので基本的にレーザー治療は3~6ヶ月ごと行います。
強く色素沈着している場合や肌の状態によって、レーザーの治療間隔を6ヶ月に伸ばすこともあります。
ADMは肝斑を合併しやすく、またADMはレーザーによる色素沈着もしやすいため、ハイドロキノンやトレチノイン、トラネキサム酸の塗り薬やビタミンC・トラネキサム酸の飲み薬の併用もおすすめしています。
ハイドロキノンやトレチノインについてはこちらもご参照ください。
通常、数回の施術を重ねることで目に見える改善が期待でき、患者の肌状態に応じて治療回数を決定します。
2.薬物療法

一部のケースでは、薬物療法が用いられることがあります。
ADM自体の治療というより、ADMと一緒にみられる色素沈着や肝斑を薄くし、肌を明るくすることが目的になります。
メラニン生成を抑えるトラネキサム酸やハイドロキノンなどの薬剤を使用し、これらの薬剤は色素沈着を和らげる効果があります。
ただし、効果が現れるまでに時間がかかるため、継続的な使用が必要です。また、医師の指導のもとで使用することが重要です。
3.日常ケア

日常生活での紫外線対策は欠かせません。
日焼け止めの使用や帽子・サングラスの着用を徹底することで、新たな色素沈着の発生を予防できます。
また、保湿を重視したスキンケアを行い、肌のバリア機能を維持することも重要です。
治療後の肌を守る!日常生活で気を付けたい4つのポイント
ADMの治療後には、肌を健やかに保つためのケアが重要です。
・紫外線対策を徹底する
治療後の肌は特に敏感なため、日焼け止めの使用を徹底してください。SPF50以上の製品を選び、こまめに塗り直すことが推奨されます。
・保湿を重視する
治療後の肌は乾燥しやすいため、保湿をしっかりと行うことで、肌のバリア機能をサポートします。セラミドやヒアルロン酸を含む保湿剤を使用すると効果的です。
・刺激を避ける
治療後の肌はデリケートな状態にあるため、刺激の強いスキンケア製品やピーリングは避けましょう。また、摩擦を防ぐために、タオルで顔を拭く際は優しく押さえるようにしましょう。
・医師の指導を守る
治療後の経過観察や必要に応じた追加治療について、医師の指導を遵守してください。適切なアフターケアを行うことで、治療効果を最大限に引き出すことができます。
専門医に聞いてみよう:相談のコツとおすすめの治療先
ADMの治療を検討する際は、信頼できる専門医に相談することが大切です。ファラド皮膚科では、院長が患者様一人ひとりの状態に合わせたカスタマイズ治療を行っています。
相談のポイント
・自分の症状や悩みを正確に伝える
診察を受ける際には、自分の症状や悩みを遠慮なくおっしゃってくださいね。
例えば、いつから症状が出始めたのか、どのような状況で悪化するのか、また普段使用している化粧品やスキンケアについても共有することで、私たち医師がより正確に状態を把握できます。
特にADMのような個別性の高い症状では、この情報が診断と治療計画の鍵となります。
・治療法の選択肢やリスクについて質問する
治療にはいくつかの選択肢があるため、それぞれの治療法の効果やリスク、ダウンタイムについて気になったことがあるなら遠慮なく質問してください。
例えば、レーザー治療の場合、具体的に何回施術が必要か、また副作用の可能性について確認することが重要です。
医師にしっかりと質問することで、治療に対する不安を軽減し、納得して治療を進めることができます。
逆に、これらの質問に医師がしっかりと答えられないような皮膚科は治療を受けるべきか検討した方がよいかもしれません。
・アフターケアの計画を確認する
治療後のアフターケアは、治療効果を最大限に引き出すために欠かせません。
治療後にどのようなスキンケアを行うべきか、また紫外線対策や再診のタイミングについても詳しく確認しておきましょう。
適切なアフターケアを行うことで、肌の回復をサポートし、新たな色素沈着の発生を防ぐことができます。
せっかくレーザー治療をしたのに、また色素沈着が起きてしまっては悲しいですよね。
ADMに向き合う第一歩:明るい未来のために
この記事を通じて、ADMの悩みが少しでも解消されることを願っています。
肌の悩みは一人で抱え込まず、専門医と連携することで適切な解決策を見つけることができます。
治療には時間がかかることもありますが、根気強く取り組むことで、きっと理想の肌を取り戻すことができるでしょう。
勇気を持って一歩踏み出し、明るい未来へと進んでください。
上野御徒町ファラド皮膚科では、最先端の技術と丁寧なカウンセリングを提供しています。
ADMでお悩みの方は、お気軽にご相談くださいね。
【参考文献】
- Mizoguchi M, Murakami F, Ito M, Asano M, Baba T, Kawa Y, Kubota Y. Clinical, pathological, and etiologic aspects of acquired dermal melanocytosis. Pigment Cell Res. 1997;10:176-83.
- 山下理恵、他 日本レーザー医学会雑誌 31(1):36-41, 2010
ADMについて気になる方はこちらもご参照ください。